太原工場で暴動が起きた発端については内外のメディアがさまざまに報じていて、「従業員同士のいさかい」とするものも一部にはある。ただ、大半は、「警備員と従業員のいさかい」とするものが多い。

 例えば台湾紙『経済日報』(2012年9月25日付)によると、同月23日午後10時ごろ、従業員と口論になった警備員が暴力を振るったのが発端となり、これに怒った従業員らによって騒動が拡大したとしている。また、また『21世紀経済報道』(同月26日付)は、警備員が殴ったのは山東省出身の従業員で、クルマの中に連れ込んで暴力を振るったことに同郷の従業員らが激怒、これに河南省出身の従業員らも加わって警備員らに仕返しをした。さらに、人数が膨れ上がって暴徒化した従業員らが、工場の受付や食堂、掲示板、送迎用のマイクロバスなどを破壊したとしている。

 中国紙『第一財経日報』(9月25日付)が伝えた従業員らの話によると、同工場には7万9000人の従業員と1500人の警備員がいるが、これまでにも従業員に対する警備員の暴力が頻発。また、工場の規則を守らせる際の警備員らの乱暴なやり方、言い換えれば「軍隊式」ともいわれるフォックスコンの厳しい社員管理に、従業員らの不満が高まっていたという。当社のウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)では、「暴動のiPhone 5関連工場、初ロット分出荷は騒動前に完了か」と題する記事など、太原での騒動をまとめた記事を掲載しているので、興味のある向きは参考にされたい。

 さて、太原工場の暴動以外にも、フォックスコンの中国生産にゆがみが生じていることをうかがわせる報道が、9月には他にもあった。それは、5万人、10万人という単位の人集めを前提として生産計画を立てることが、もはや難しくなっているのではないか、というものである。

 報じたのは中国紙『中国経営報』(9月22日付)。それによると、iPhone 5アセンブリの主力工場であるフォックスコンの河南省鄭州工場では、1日当たり20万台の生産能力を最大限に発揮しないと、計画通りの供給に支障をきたす恐れがある。そのために同工場では、新規に20万人、9月だけでも5万人を集める必要があり、河南省政府挙げて従業員の採用に協力しているが、必要な人数を確保するにはほど遠い状況が続いているという。例えば同省商丘市寧陵の政府は、2012年末までに700人を集めるノルマを上級の政府から課されているが、これまでに集めたのは100人で、目標の達成は絶望的だと見られているという。