今週、米Google社のタブレット端末「Nexus 7」が日本でも発売されました。最新機能がてんこもりで値段も手ごろと魅力的な端末ですが、昨年夏に米AppleのiPadを購入しているだけに、ガジェットにまったく興味のない妻を説得するのは容易ではなさそうです。「購入」ボタンを押すことができずにいます。

 実は、Nexus 7の購入を躊躇している理由がもう一つ。Nexus 7以上に魅力的なガジェットが今年末に発売されるので、出費を控えなければと思っているからです。そのガジェットとは、任天堂が2012年12月に発売を予定している新型の据え置き型ゲーム機「Wii U」です。任天堂のゲームが遊べることはもちろん、NFC(near field communication)をはじめとする新技術が数多く盛り込まれていることにも大きな魅力を感じています。

 その中でも個人的に注目しているのが、無線でゲーム画面を伝送する技術です。Wii U本体で生成した映像を無線で飛ばし、6.2型のタッチ・パネル液晶を備えるコントローラ端末に表示します。テレビとコントローラ端末で異なる二つのゲーム画面を表示したり、テレビは野球中継などの放送番組を映しつつコントローラ端末にゲーム画面を表示して遊んだりもできます。

 私はWii Uの登場をきっかけに、無線映像伝送の技術が広く普及する可能性があると考えています。Wiiのコントローラ端末に搭載された角速度センサしかり、ニンテンドーDSのタッチ・パネルしかり、任天堂のゲーム機で採用された後に大ブレークした技術は少なくありません(角速度センサやタッチ・パネルの普及を牽引したのはiPhoneをはじめとするスマートフォンですが、任天堂はiPhoneの登場前にこれらの技術を採用しています)。任天堂は「テクノロジー」を「エンターテインメント」へと昇華させることにおいて、世界有数のノウハウと実績を持つ企業です。だからこそ、任天堂が無線映像伝送の活用方法を示し、それにインスパイアされる形で他の企業からも新たなアイデアが続々と出てくることに期待しているのです。

 折しも2012年9月20日、無線LAN機器の相互接続認証・普及促進団体であるWi-Fi Alliance(WFA)が、無線LAN技術を使って映像を伝送する技術規格「Wi-Fi Display」の認定プログラム「Wi-Fi CERTIFIED Miracast」を開始すると発表しました。(関連記事)。韓国Samsung Electronics社や米Intel社、Broadcom社、台湾MediaTek社などが対応を表明していることからも、これから無線映像伝送の対応製品がどんどん登場しそうな勢いです。

 以前のエディターズ・ノート「大画面テレビでも楽しみたいスマホのコンテンツ」でも触れましたが、無線映像伝送技術は家庭のリビングルームの姿を変える可能性を秘めています。Wii Uをきっかけに無線映像伝送技術が普及すれば、これまで想像しなかったようなホーム・エンターテイメントが新たに登場するかもしれません。『NEテクノロジー・シンポジウム2012 @CEATEC』の『無線LAN超高速化時代、次世代Wi-Fiが描くリビングルームの未来』では、キー・プレイヤーが登壇して最新の無線映像伝送技術などを解説しますので、ぜひ足をお運びいただければ幸いです。

 ちなみに、任天堂はWii Uの映像伝送にどんな技術を採用しているかを明らかにしていませんが、無線は5GHz帯を使用しているもようです。任天堂の岩田聡社長が「遅延を最小に抑える」と語っていることから察するに、任天堂が独自に開発した技術か、イスラエルAMIMON社が開発した「WHDI」のどちらかのようです(60GHz帯を使用する「WirelessHD」や、遅延に関する規定がないMiracast=Wi-Fi Displayの可能性は低いとみています)。Wii Uが発売された後、分解などによって詳細を明らかにしたいと考えています。