• [1]初期の設計フェーズの思考段階における不確定で曖昧なデータや情報を、どこまで管理するのが良いかを議論し、明確にする
    • ・設計初期の時点ではアイデアは複数あるのが当然である。少なくとも当初からモデルや構成情報が一意に決まるわけではない。構造・構成情報は複数あり、その変更も、都度あるフェーズでの厳密な管理は無理を生ずる
    • ・設計仕掛りのフェーズでは、複数案をルーズに管理・活用できるデータ管理が望ましい
  • [2]設計の仕掛り段階では、設計者に厳密な設計BOMの作成・変更管理の運用を押し付けない
    • ・設計BOMは、設計確定時に設計仕掛りBOMから作る(仕掛りと確定は同一システム上のBOMである必要はない)
    • ・設計BOMを強引に作成・運用するより、生産準備BOMを構築し運用する方が現実的な場合もある
  • [3]CAD・PDM・PLMのデータの整合性に対する妥協点を考えておく
    • ・特に設計仕掛りフェーズでのデータに対し、リアルタイムは論外としても、時間軸の短い厳格な整合性確保は設計者にとっても負担になるだけである
    • ・逆に確定時や変更時は相互のデータの整合性を取っておく。さもなければデータ流用もできない信頼性のないしくみとなりかねない(ここには、軽々しく口にできない運用課題がある)
  • [4]プロセス管理に適用するタスクの粒度を小さくし過ぎない
    • ・PLMツールは例外なくプロジェクト・マネジメント・ツール機能を有している。これを使用する場合も大日程管理の粒度で使う。大日程~小日程管理(個人のタスク単位のWBS)まで落とし込むと、運用は回らない
 以上はどちらかというと、筆者がかつて在籍していたハイテク、家電、精密業界におけるPLM展開時の考慮すべき点だが、業種や業態により内容が異なるのは当然である。例えば、個別受注型の場合は、ベースとなる機種の開発プロセスで上記の課題に留意する必要があるが、その後の個別受注製品(製番)の営業引き合い~検討・回答~受注~カスタマイズ設計~製番生産~据付・調整~保守・サービスのプロセスでは、むしろCAD・PDM・PLM間のデータの整合性を常に取りながら、製番定義情報の一元管理・統合管理を積極的にしくみ化すべきである。つまり、アーキテクチャの体系化、標準化、モジュール化を進めるフェーズにおいては、プロセス・マネジメントに主眼をおいたPLMの構築に注力し、それらが確立したフェーズでは成果物のデータ・マネジメント(構成管理、変更管理など)の構築が勘所となる。これは全ての業種・業態にも通じるものだと考える。

 このPLM導入最盛期の日本のPLM適用実態は、「日経ものづくり」誌で2005年頃から継続実施されている日本のPLM実態調査の記事によれば、2005年当時の1000人以上の企業におけるPLM構築実績は、構築中も含めて25%~30%であることが示されている。