国境を越えた競争に勝ち抜くには、製造業のグローバルなプロセス改革は必然だ。生死を決するのは、日本の擦り合わせ能力に合致したITとマネジメントである。この分野で数多くの実績を持つコンサルティング会社のデロイト トーマツ コンサルティングと、軽量3次元データ形式「XVL」のラティス・テクノロジーが、ITとマネジメントの両面から、グローバル製造業のための次世代ものづくりプロセスに必要なものを解説する。

危機に瀕する日本の製造業

 エルピーダメモリの経営破たん、シャープの経営危機…。日本を支えてきた製造業に元気がない。国内では円高、電力不足、高人件費といった、いわゆる「6重苦」の重圧を受け、工場の海外移転が加速している。一方、海外では人件費の高騰が始まり、待遇に不満を持つ労働者のストライキも頻発している。残るも地獄、出るも地獄である。個人も企業も自分の身は自分で守る時代になった。

 今こそ、企業は生き残りをかけてイノベーションに挑戦し、世界で勝てる製品を開発すべきだ。企業を支えるイノベーションは2つある。製品そのものの機能や性能、ビジネスモデルで差別化するプロダクト・イノベーションと、品質の良いものを安価に短納期で提供するために業務手法を革新するプロセス・イノベーションである。最近の勝ち組企業は、どちらのイノベーションにおいてもITを効果的に利用している。

 例えば、アップル社のiPodビジネスを成功に導いたのは、iTunesという楽曲配信システムであり、この成功の上に、さらにiPhoneやiPadという成功を積み重ねている。また、韓国Samsung Electronics社を世界一の企業に変えたのは、世の中のグローバル化とデジタル化をきっかけとした、人材育成、製品開発、生産プロセスの3つのイノベーションだという〔畑村洋太郎・吉川良三著「勝つための経営」(講談社現代新書)による〕。強烈なトップダウンで社員の意識を変えつつ、製品とプロセスのイノベーションを成功させている。そして、そのプロセス・イノベーションの中心が、グローバルな情報共有の実現であり、市場の求める質に応じた製品開発をITで支援する仕組みだという。