筆者が最初に触った「スパコン」は、米国製の2機種でした。偶然とは面白いもので、当時数値計算ライブラリのインストールを担当していた筆者が某国立大学のマシン室で最初に触ったのが、現職であるIBM製の「SP/2」とSilicon Graphics製の「Origin2000」でした。管理者の方に厳重に背後で監視されながら(笑)、オペレーションしたのは今でも記憶に残っています。

 そこから、さまざまな当時のスパコンに触れていくことになったわけですが、以下に筆者が実際に見た各社の当時の代表的なスパコンを、覚えている限り列挙してみます。

まず、国産から(順不同)。
 ●VPP700(富士通)
 ●SX-4(NEC)
 ●SR8000(日立製作所)

 国産マシンは「ベクトル型(次回以降で解説します)」が中心の、CPUからの自社開発が主流でした。SR8000は、PowerPCをベースにしていたと聞いています。それ以外にも国産のスパコンにはさまざまなモデルが存在していました。それぞれのメーカーには独特のカラーがあり、富士通が赤、NECは黒っぽい感じ、日立はグレーに青のラインだったと思います(昔のFormula1でもイギリスが深緑、ドイツがシルバーとか色がありましたよね)。

次に海外製(米国製といってもよいでしょう。順不同)
 ●SP/2(米IBM社)
 ●AlphaServer(米Digital Equipment社)
 ●Starfire(米Sun Microsystems社)
 ●Superdome(米Hewlett-Packard社)
 ●CRAY C90(米CRAY Research社)
 ●Origin2000(米Silicon Graphics社)

 その他に、米Convex Computer社や米Tera Computer社など、今は解散や買収によって名前を聞くことのなくなった会社名もあろうかと思います。カラーはIBMが紺、DECが濃赤、Sunがグレー、HPがアイボリー、CRAYは黒っぽく、SGIは青という感じで、これまた筐体のデザインが本当に美しいものでした(これらのキーワードでぜひ画像検索してみてください)。

 これらのモンスターマシンは、超高性能で筐体も大きく高価、維持費も「フェラーリ並み!!」(当時のお客様談)で、一般人にはとても購入できるものではなかったですし、その利用にも専門知識(まさにレーサー!)が必要だったのです。

 クルマ大好きの著者がハマらないわけがありません。当時は各自動車メーカーが、ハイエンドスポーツカーをガンガン売っていた時代です。スパコンの世界も、当時はさながらフェラーリあり、ポルシェあり、いやいや日本だってトヨタもあるし、日産、ホンダ、三菱、マツダも…とさまざまなメーカーが入り乱れる自動車そっくりの状況でした。その技術にしても、自動車でなぞらえればV8(V型8気筒)あり、V10(同10気筒)あり、ロータリーエンジンもあり、といったようにそれぞれ多くの個性があったのでした。筆者は、モーターショーでカメラを持って興奮する少年のような毎日を過ごしたものでした。

 そのような、筆者が出合ってその知識を深めていったスパコンとは何だったのか、次回から書いていきたいと思います。