図1 Power-One社のパワー・コンディショナ「AURORA TRIO」
図1 Power-One社のパワー・コンディショナ「AURORA TRIO」
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 数年前、太陽電池を設置したマンションを取材した際、「パワー・コンディショナ(パワコン)からファンを外している」と聞いて驚きました。稼働部品であるファンは故障頻度が高いため、メーカーに頼んで外してもらったとのこと。ファンで冷やす代わりに、冷却フィンをコンクリートに接触させて冷やしていました。

 今では、ファンを外す動きは、産業向けパワコンなどにも広がっています。あるメーカーのカタログを見ると、「5年ごとに必要だったファンの交換が不要になり、メンテナンス費用の低減ができます。信頼性と運転継続性が向上します」とあります。

 今後もメンテナンスの手間と費用を省く努力は続きそうです。産業向けパワコンでは、ファンに続いてコンデンサの長寿命化の検討が活発になっています。具体的には、インバータに用いる平滑用コンデンサを、従来のAl電解コンデンサに比べて寿命が長いとされるフィルム・コンデンサに置き換えようというのです。

 これまで平滑用コンデンサは、他のコンデンサ部分に比べて容量が必要のため、容量当たりの価格が安いAl電解コンデンサが使われていました。これが、ハイブリッド車(HEV)へのフィルム・コンデンサの採用によって、状況が変わりました。技術開発が一気に進んで、高容量化(小型化)や低コスト化が進展したのです。

 これを見た米Power-One社が、フィルム・コンデンサのみを使ったパワー・コンディショナ「AURORA TRIO」をいち早く発売しました(図1)。今後は、国内メーカーもフィルム・コンデンサを採用していく方針です。さらに価格が下がれば、家庭用パワコンへの搭載も夢ではないでしょう(詳細は、日経エレクトロニクス2012年9月17日号の解説記事「フィルム・コンデンサ躍進、クルマからエネルギーへ」をご覧ください)。

 太陽電池分野では、全量買い取り制度が始まったことで、メガソーラーの建設計画が注目を集めています(日経エレクトロニクスでは連載記事「現地レポート、日本のメガソーラー」を始めました)。実はその影で、フィルム・コンデンサのように技術開発も着実に進展しているのです。特に結晶Si型やCIS系、有機薄膜型、化合物多接合型では、日本メーカーがけん引する形で、技術進化が進展しています。これらの太陽電池技術の進展に興味がある方は、10月30日開催のセミナー「太陽電池のポテンシャル、技術開発はどこまで進むか」に、ぜひご参加ください。