永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
2012/09/24 00:00
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今回紹介する書籍
題名:独自上場
著者:李娜
出版社:中信出版社
出版時期:2012年8月

 この原稿を書いている9月18日はいわゆる「柳条湖事件の日」である。1931年の現・瀋陽市近郊の柳条湖近辺で南満州鉄道の線路が爆破された事件で、満州事変の発端となったとされている日だ。ご存じの通り、今年は尖閣諸島の日本国有化問題と関連して数日前から中国国内の過激な示威行為が報道されている。今回、暴徒と化している若者はいわゆる「憤青」と呼ばれる若者だと思われるが、「憤青」について書いた本を昨年本欄で扱っているので、今週の本題に入る前に簡単にご紹介しておきたい。紹介したのは2010年の秋に出版された廖保平著『打捞中国愤青(直訳:中国の憤青をすくいあげろ)』という作品。「憤青」というのは「憤怒青年」の略で、行動様式から見ると日本のいわゆる「ネトウヨ」(ネット右翼)に近い。本書ではこの憤青たちに、そのままではいけない、もっと合理的理性的に国を憂え、といった呼びかけをしていた。現在読み返しても大変示唆に富む内容なので、よろしければそのエッセンスに触れていただきたい。

 さて、今回ご紹介するのは、中国の人気テニスプレーヤ李娜の自伝。李娜は1982年生まれの今年30歳の女子プロテニス選手である。2011年の全仏オープンで優勝し、2012年度のフォーブスの中国有名人ランキングでも第5位に入っている、名実ともに押しも押されもせぬ一流選手だ。だが、彼女に人気がある理由はその強さだけではない。彼女は2008年9月以降、国の管理から独立したプロテニスプレーヤとなった(彼女以外にその時独立を許されたのは鄭潔、彭帥、晏紫の3人)。その自律的な生き方を含め若い女性の間で人気を得ている。

 李娜の反省を簡単に振り返ってみよう。1982年、武漢に生まれ、小学二年生の時にテニスを始める。1997年に青島で行われた全国テニス連合の試合にて人生初の優勝を飾り、スポーツメーカー「ナイキ」の関連するアメリカのテニススクールに留学。1999年にプロ入りしたが、その後自らの意思に反し、(のちに夫となる)姜山とのコンビを解消させられたことをきっかけに体調を崩し、2002年には一旦引退し大学に進学している。その後2004年に復帰した。復帰後は引退前に比べ、テニスに対する姿勢の変化からか好成績を残し、2011年には4大メジャーの一つである全仏オープンで優勝している。

 このように齢30歳にして全盛期を迎えたとも思われる李娜であるが、そのテニス人生は苦難の連続であった。筆者は本書を本コラムの題材に選んだ時、その苦難の人生を乗り越え、30歳という比較的高齢でテニス界の頂点に立てた練習方法や自己管理法が書かれているかと期待した。しかし、本書はむしろ李娜という女性がテニスという自らの自己実現の方法を通して成長していくさまが描かれた自伝文学的要素の強い作品であった。ただ、その中には中国人の考え方などが強くにじんでおり、期待した内容よりもむしろ今の読者のニーズに近い読み方ができると感じた。次回は李娜自身のひととなり、考え方などを紹介していく。

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