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エディターズ・ノート

Intelはマイクロプロセサに、RFをどこまで組み込んでくるのか

  • 蓬田 宏樹=日経エレクトロニクス
  • 2012/09/19 10:23
  • 1/1ページ

「へー、あの話を出してきたのか」。

 先週、米国サンフランシスコで開催された、米Intel社主催の開発者会議「IDF (Intel Developer Forum)」(2012年9月11日~13日)。次期マイクロプロセサ「Haswell」の発表や、ノート・パソコンをUSBの供給電力で駆動する「USB PD」のデモ、60GHz帯のミリ波無線通信など、今回も多くの話題が飛び出しました(Tech-On!の関連記事)。

 その中で、私が気になったのは、最終日のCTO(Justin Rattner氏)の基調講演です(Tech-On!の関連記事)。Rattner氏の基調講演は、同氏がCTOであることから、毎回、少し先の技術トレンドについて講演してきました。今回は、無線通信に関する話を主題としました。無線通信に利用する高周波回路(RF回路)の多くのブロックをCMOS技術で実現することで、マイクロプロセサと1チップ化できるという開発技術について、将来トレンドの一つとして言及したようです。その技術の例として、ノート・パソコン向けのマイクロプロセサに、無線LAN(Wi-Fi)のRFトランシーバ回路やパワー・アンプを集積するという技術を披露しました。

Wi-Fiがマイクロプロセサの一機能に

 Intel社は、これまでもRF回路をCMOS技術で実現することに熱心に取り組んでおり、以前のIDFにおいて、RF回路をデジタルCMOS技術で実現した試作品を発表していました。今回Rattner氏が紹介した、SoCに無線LANのRFトランシーバ回路を組み込むという話は、今年2月に米国サンフランシスコで開催されたISSCC 2012で発表していたものをベースとしています(Tech-On!の関連記事1Tech-On!の関連記事2)。32nm世代のRF CMOS技術で、RFトランシーバ回路のほか、パワー・アンプや低雑音アンプ、オンチップ・レギュレータなどを集積しているもようです。

 既に、RF回路の主要なICであるRFトランシーバICは、CMOS技術によってデジタル回路で駆動する部分がほとんどです。周波数変換の回数を減らしてアナログ・フィルタを不要にしたり、アンプすらCMOS技術で実現されたりしています。Bluetoothや無線LANの送受信ICはそうした例です。そのため今回のように、SoCと共通のダイにRF回路を組み入れてしまうという発想自体は、従来からありました。しかし、Intel社が実際にAtomコアを集積したSoCで試作しているという事実は、非常にインパクトのある話と感じます。

 こうした技術が本当に実用化すると、無線回路(RF回路)を手掛ける企業群や業界にとっては、大きな影響のある話になるでしょう。例えばスマートフォン。現在はアプリケーション・プロセサ(およびベースバンドLSI)と、無線LANの送受信ICは別々に基板上に実装されています。無線LANの送受信ICが用いるパワー・アンプや低雑音アンプといったRFフロントエンド部も、外付けの場合が多いです。Intel社のSoCは、無線LANのRFトランシーバICを飲み込むだけでなく、パワー・アンプやRFフィルタなど、一部のRFフロントエンド部の機能まで、マイクロプロセサで実行し得ることを示しています。RFトランシーバICのメーカー領域のみならず、パワー・アンプやフィルタを手掛けているメーカーの領域まで進出しようという狙いに見えます。

 つまり、このようなRF混載技術は、無線LANのRFトランシーバICを手掛けているBroadcom社やQualcomm社にとって強力な競合企業の登場となるだけでなく、RFフロントエンドを手掛ける日本の部品メーカーにとっても脅威となる可能性があるというわけです。

 当然、Broadcom社やQualcomm社も、機能統合を速めてくるでしょう。数年後には、無線LANやBluetoothのRFトランシーバ機能は、スマートフォンのアプリケーション・プロセサの一機能になっているかもしれません。さらに数年後には、3GやLTEのRF回路の機能も、一部は組み込まれる可能性があります。

 Intel社の今回のRF技術が、どこまでの機能を集積可能なのかはまだ見えていない部分が多いのですが、Intel社は将来、その多くをマイクロプロセサに取り込もうと、虎視眈々と狙ってくるでしょう。マイクロプロセサの微細化を進めるうえで、機能集約は必須の流れであり、「聖域」と言われてきたRF部すら、いずれ例外ではなくなる――そう見ておいた方がよさそうです。

 果たして、Intel社はこの技術をどのように展開してくるのでしょうか。使い方によっては、ユーザーである機器メーカーにとっての、新たな商品コンセプトにつなげられるかもしれません。来年のISSCCやIDFでのIntel社の成果発表に、引き続き注視していかなければと思っています。

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