日系企業はモノづくりを得意とし、付加価値を上げる製造そのもの(直接部門)の改善を着実に進め、コストダウンも行ってきた。近年は人件費の高騰が著しく自動化などによりその対応をしようとする傾向が増えている。一方、間接部門の業務、人員、その業務結果について、コストとして考え、効率化やコストダウン活動を行ってきただろうか。企業の現場を見ていると、まだまだ取り組みが不十分な企業が多いと認識している。

 中国の工場でも原材料以外にも、間接的な副資材や消耗品、倉庫や車両などの賃借、物流、食堂、清掃、守衛、廃棄物処理といった業務委託など、数えきれないほどのサービスや製品を購入している。これらの中で、一般購入品はその仕様が明確であり、そのサービスや製品を提供できるベンダーはここ中国でも多い。しかし、この領域のコストダウンに依然として手をつけられていない、あるいは形だけのコストダウンしか行っていない企業が意外に多い。

 購買コストダウンで重要なことは、四つの価格要因の「何かを変える」ことである。四つの価格要因とは、「購買政策の視点」「買い方の視点」「仕様の視点」「造り方の視点」である。何も難しいことを言っている訳ではない。基本的な競争購買や仕様変更などを、効果的に、継続的に、客観的に進めるだけである。

 中国においては購買担当者や購入依頼者は、一度購入先を決めると取引の継続性を求める傾向がある。余計な手間を掛けたくない、提供されるサービスや製品の品質や納期などの不安定さを避けたいのである。しかし企業経営の立場に立てば、多くの候補購入先を集め競争させる状態を作り、購入単価を下げさせるのが本来の購買業務である。加えて、購入するサービスや製品の仕様を、より適切な内容を指示して変更、改善させるのは、コストダウンを使命とする購買プロフェッショナルとして当たり前の姿である。しかし、この購買プロフェショナルに必要な基本知識やスキルが依然として不足し、専門的な教育がされていないのが実情である。

 中国では、「B to B」の売買をサポートするウェブサイトがある。審査を受け合格したベンダーだけが入札する権利を持つサイトであり、購入側が購入するサービスや製品の仕様や条件を入力し、それを通知されたまた閲覧したベンダーが入札できる無料の仕組みである。夕方に入力すれば翌朝には登録した会社から価格などの情報が提供される。この方法である日系企業が一般購買品を調査したところ同じ仕様で15%~30%以上のコストダウン余地があった。最終的にはその企業情報を自ら確認し現地に足を運び経営者面談や現場視察することは当然必要である。

 購入総額が大きいほど、継続購入期間が長いほど、コストダウン余地は大きいと考えるべきであろう。