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25%オフセット衝突試験は車体設計を変えるか

鶴原 吉郎=日経Automotive Technology
2012/09/18 13:57
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 2012年8月にIIHS(米道路安全保険協会)が発表した試験結果が、日本の自動車業界に衝撃を与えています(発表資料)。これは、IIHSが初めて実施した25%オフセット前面衝突試験の結果で、最高評価のG(Good)評価を得たのはホンダの「Acura TL」とスウェーデンVolvo社の「S60」のみ。日産自動車の「Infiniti G」はA(acceptable)評価、ホンダの「Acura TSX」、ドイツ BMW社の「3シリーズ」、米Ford Motor社の「Lincoln MKZ」、ドイツVolkswagen社の「CC」はM(marginal)評価にとどまり、ドイツDaimler社の「Mercedes-Benz Cクラス」、トヨタ自動車の「Lexus IS 250/350」、「同ES 350」、ドイツAudi社の「A4」に至っては最低のP(poor)評価に沈んだからです(試験車両はすべて2012年型モデル)。

 25%オフセット前面衝突試験は、これまでの40%オフセット衝突よりもさらに浅く、車両前端の運転席側25%にバリアを衝突させるものです。衝突速度は従来の40%オフセット衝突と同じ時速40マイル(約64km/h)。車体の前面衝突で主にエネルギ吸収を担うフロンドサイドフレームよりも外側にバリアが衝突するため、このフレームによるエネルギ吸収がほとんどできずにバリアがキャビンに衝突します。このためキャビンに要求される強度が、従来の40%オフセット衝突に比べて格段に高くなります。

 実際、Pの最低評価を受けたトヨタ自動車のLexus ISの試験結果を見ると、フロントピラーが折れ曲がり、キャビンが大きく変形しています。乗員の足元スペースには前輪が深く侵入し、ダミーの足はブレーキペダルの下に挟まれています。同様の現象は、ISと同様にP評価となったMercedesのCクラスでも発生しました。

 今回の試験結果を受けて、完成車メーカーが車体構造の改善に乗り出すことは間違いありません。高い評価を受けたAcura TLの車体構造の特徴の一つは、高張力鋼板の採用拡大に加えて、サイドシルとセンターピラーにホットプレス材を使ったことです。ホットプレス材は鋼板を加熱し、水冷する金型で成形しながら焼き入れすることで強度を高めた鋼板です。加熱した材料を成形するため形状の自由度が高く、また焼き入れによって強度は1500MPa以上になり、現在冷間プレスにより実用化されている高張力鋼板の強度が最高でも980MPa程度なのに比べて大幅に高まるのが特徴です。

 鋼板を加熱するための炉が必要、鋼板を冷却するために成形サイクルが長い、焼入れ後は硬度が高いためトリミングにレーザ加工設備が必要――などにより成形コストが高くつくため、これまで国内の完成車メーカーの採用は一部の部品にとどまっていました。しかし、燃費向上のための軽量化に加え、上記のような衝突安全性能の向上ニーズの高まりから、今後、日本車でも採用が増えそうです。事実、ホンダは9月に発売する北米向け新型「アコード」にもAcura TL同様ホットプレス材を採用したほか、トヨタ自動車も最新の「Lexus GS」ではキャビンの強化にホットプレス材の採用に踏み切っています。

 2012年9月30日発行の「日経Automotive Technology 2012年12月号」の特集テーマは「軽量化技術」。ホットプレス材の最新動向についても詳しく取り上げます。ぜひご覧下さい。

 

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