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良い現場を持つ戦略的農家に日本のものづくりが学ぶべきこと

「畑が見える化農園」が狙うフランチャイズ・ビジネスの意義

井上 久男=フリージャーナリスト
2012/09/20 00:00
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 自助努力で生き残りを図る戦略的な農家の発想や行動は、グローバル市場で戦う日本のメーカーと何ら変わりない。

ファーム・アラインス・マネジメントの松本武社長
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 農業ベンチャー企業「ファーム・アラインス・マネジメント」(資本金1400万円、社員3人)の松本武社長(46)は「理想とする企業は米国のアップル。顧客目線を大切にしながら、したたかな戦略もあるからです。アップルのような農業組織を目指したい」と話す。

 同社は2012年3月に設立され、ベンチャーキャピタルも出資を検討している。主な事業は、事業規模の拡大意欲がある農家に対して、グローバル市場への進出を手助けしたり、収益性を向上させたりするために国内外の認証取得や生産情報管理システムの導入など経営効率が高まるノウハウを提供してフランチャイズ化していくことだ。フランチャイズ化により機動的な「連合体」を創出し、農作物の出荷アイテムや出荷量も拡大していく狙いだ。

 事業の詳細やその意義は後述するが、松本氏のキャリアやこれまでの取り組み・実績がユニークだ。ファーム・アライアンス・マネジメント社は松本氏の経験やそれに基づく問題意識から誕生した企業でもある。

 松本氏は大学卒業後、旭化成に入社。医薬事業部で約6年間、病院向けの薬の営業を担当していたが、父に頼まれUターンして実家の農業生産法人・松本農園(熊本県・益城町、資本金800万円、従業員31人)で経営を仕切るようになった。松本農園は、ニンジンやゴボウ、里芋、大根などの露地野菜を年間延べ50ha栽培している。

 家業である農業に携わってみて松本氏はまずこう感じた。「経営という意識があまりにも低すぎる。コスト管理やIT化など、工夫の余地はまだまだ存在している。やり方によっては十分に利益が出るようになる」

 松本農園ではIT技術を駆使して栽培プロセスの「見える化」の徹底を始めた。「見える化」とは、野菜を買ったお客が袋に付いている13桁の数字を専用のホームページに入力すれば、種を蒔(ま)いた時から収穫まで、何月何日にどのような作業をしたかが全て開示され、使用した農薬や肥料の種類までも全て分かるシステムのことだ。グーグルマップと連動し、栽培した畑の位置を航空写真で見ることもできる。

松本農園でタッチパネルに向かう松本武氏
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 松本農園の作業者は一日の仕事が終わると、事務所内にあるタッチパネル式の端末に本日の作業状況など毎日の細かいデータを入力することで「見える化」を実践している。筆者も2011年、松本農園に取材に訪れたが、パート作業者もみな入力していた。

 その大きな狙いは、生産履歴を顧客に開示することで、信用を得ることと、高付加価値農産物として値引き競争に巻き込まれないようにすることであった。松本氏は医薬品営業の経験から「安心安全をイメージで語ってはいけない。医薬品は副作用のことまでしっかり説明しないと売れないのと同じ」との思いがある。

 生産履歴管理の強化が自社産の野菜の差別化につながり、高付加価値商品として、納入先の大手スーパーに「価格を納得してもらって」売ることがきできるようになった。要は値引き競争に巻き込まれなくなったということであり、松本農園は生産者として価格決定権を手にしたのである。実はこれは日本の農産物の流通では珍しいことだ。一般的に農協の傘下にある農家は、販路の開拓は農協任せになるため、販売価格は思いのままにならないからだ。

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