確かに、ヤンゴン市内の自動車修理工場や中古車販売店を周ってみると、華僑が経営する店舗が多いことに気づく。

 足を延ばしてヤンゴン郊外の現地自動車メーカーの生産工場にも行ってみた。ミャンマーでも、自動車製造まで手がける工場は数少ない。生産台数も乗用車を月産500台ほどとまだ少ないが、溶接や塗装も自前でこなし、別の工場では金型やダイカスト部品も製造している。主要部品はまだ輸入に頼っている状況だが、現地組み立て工場としては立派なものだ。

 かつては、日本の大手自動車メーカーがミャンマーで自動車の現地製造を計画していたという。しかし、ミャンマーの軍政化で米国政府の顔色を伺う日本企業は、ミャンマーでの本格製造には本腰を入れず、結局は新車の輸出を続けてきた。それをみたミャンマー政府は、日本メーカーの現地での製造許可を取り消し、現地ミャンマー資本の企業にのみ自動車製造を許可することになるのである。

 私が訪れた企業は、中古で輸入した韓国製バスのガソリンエンジンを天然ガス(CNG)仕様に置き換える事業から始め、数年前にはミャンマー国産車の製造を手がけるまでになった。専門の販売店もヤンゴン市内に構えており、新車の売れ行きは順調だ。価格は1台80万円程度。ミャンマーの自動車は大部分が日本から輸入した中古車で、100万円程度のものがよく売れるという。その価格よりも安い「新車」ということで、国産車もなかなかの人気を博しているようだ。

そしてこのメーカーも、現地資本といいつつオーナーは華僑なのである。彼は中国で苦労して自動車メーカーを立ち上げた後、ミャンマーにチャンスがありとみて十数年前に移住してきたのだという。ミャンマーに来て感じるのは、こうした華僑の力だ。どこにも中国人がいて、交渉や商談は中国スタイル。ASEANで商売をするにも、中国を学び中国流のビジネススタイルを身につけることは必須科目になりそうだ。