そう、この部品は「本物の偽物」なのである。つまり、中国のある工場が日本からの依頼を受け、日本の品質指導を受けて製造している部品なのだ。まったく同じ部品が日本に向けて輸出され、純正部品として日本で流通している。そういう意味では本物である。だが、流通ルートが正規ではない。その部品を作る中国の工場が、勝手に外国に横流しをしているという代物なのだ。

 箱は、横流し分までは日本から支給してもらえないため、現地で製造している。つまり、偽物である。もちろん、「Made in Japan」というのも真っ赤なウソだ。

 「こちらも見てください。これは明らかに中国製で偽物です」
この部品は、素人が見ても分かる粗悪品だ。しかし、ミャンマーではこの粗悪品が標準の保守パーツになっており、実際に多くの自動車に取り付けられている。日本から純正部品はなかなか手に入らず、入ったとしても高すぎる、ということのようだ。

 つまりは、高い日本の部品はミャンマーでは売れない、だから流通量も少ないということなのか。そんなことを聞いてみると、現地の人たちは「それは違う」のだという。