日本で2012年7月に施行された再生可能エネルギーに対する新しい固定価格買い取り制度が始まる前後から、大規模太陽光発電(PV)システム(メガソーラー)の設置ラッシュが起こっています。毎日のように、新しいメガソーラーの導入計画についてのニュースが流れており、昨年までとは隔世の感があります。

 ただし、関連するニュースを聞いていると「井の中の蛙」だなあと思うことがしばしば。つまり、日本での再生可能エネルギーの導入が世界の状況に比べて大幅に遅れていることが十分には伝えられていないのです。

 実際、再生可能エネルギーが既に大規模に導入されている欧州に比べると、日本での導入規模はまだまだわずかです。その規模の違いを知っておくことは、井の中の蛙にならずに、日本での再生可能エネルギーのポテンシャルを知る上で必要不可欠なことでしょう。

ドイツでは一時、必要電力の43%を太陽光発電が提供

 例えば、ドイツでは2012年の上半期に、記録的なメガソーラー・ラッシュが起こりました。導入したPVシステムは半年で定格約4.4GW(440万kW)分。特に3月以降はほぼ1カ月に1GWのペースで導入が増えました。一方、日本でこれまで発表された2年先までのメガソーラー計画を合計しても1GWを少し超える程度。これだけでも、ドイツのメガソーラー・ラッシュの規模の大きさが分かるでしょう。

 2012年6月末までの累計では、ドイツでのPVシステムの総出力は定格で約29GWに達しています。日本の導入目標が2020年で同約28GWでしたが、電力系統の規模で日本の4割ほどしかないドイツが既に達成してしまいました。

 これだけメガソーラーを大規模導入したなら、次に気になるのは実際の発電状況です。ドイツではその状況がリアルタイムに分かるWebサイトが複数あります。その一つが、ドイツに4社ある大手送配電会社の電力系統に接続されたPVシステムによる発電状況を各社ごと、かつリアルタイムに表示しているサイトです。

 過去の発電状況も遡って確認できます。例えば、2012年5月26日(土曜日)は、太陽光発電の出力が最大約22GWに達し、その時点のドイツの全発電出力の43%を賄いました。これだけPVの割合が特異的に高まったのは、その日が土曜日で全体の必要電力が小さかったからですが、前日の5月25日でもPVは約21GWの出力があり、全体の32%の電力になっています。

 送配電会社ごとではなく、地域ごとの発電状況もリアルタイムに分かります。パワー・コンディショナーのメーカーであるドイツSMA Solar Technology社が、見える化サイトを提供しているからです。これを見ると、どこが晴れていて、どこがそうではないかが一目瞭然。つまり、リアルタイムの日照量情報のサイトにもなっています。

ドイツの2012年上半期は、水力発電を含む再生可能エネルギーによる発電量が全体の25%を占めました。ここからPVの発電分を差し引くとちょうど約20%となります。最近、一部報道で、日本の環境省が、PVを別にした再生可能エネルギーの発電量の割合を2030年に20%にするという目標を作成したというニュースが流れました(ただし環境省は正式には未発表)。仮にそれが達成できたとしてもドイツに対して「18年遅れ」です。果たしてその遅れを甘受していてよいのでしょうか。

 再生可能エネルギーはコスト高という思い込みも、ドイツの現状を見るとほとんど崩れてしまいます。例えば、ドイツのPVの買い取り価格は1MW以上の大規模なシステムでは、発電量1kWh当たり13.5ユーロ・セント(約13.2円)。これが事実上のPVの発電コストだと考えると、既に火力発電の発電コストにほぼ並びつつあることが分かります。家庭向けなど小規模なPVシステム向けの買い取り価格も、19.5ユーロ・セント/kWhで、市場の電気料金より安くなってしまいました。それでも、PVシステムの導入費用が安いため、10年ほどで初期費用を償却し、後は利益になる計算です。

 実は、日本でもPVシステムの価格は、ドイツほどではないにせよ相当に下がっています。高いのは人件費を含めた工事費(関連記事)。多くの導入事例で、PVシステムの導入コストの約7割を工事費が占めているのですが、ドイツではシステム価格と工事費はほぼ1対1です。日本の現状は、大いに改善の余地があることが分かります。

スペインは一時6割の電力が風力発電に