「考えるクルマ」が世界を変える、William J. Mitchell・Lawrence D. Burnsほか著、2,940円(税込)、352ページ、東洋経済新報社、2012年2月
「考えるクルマ」が世界を変える、William J. Mitchell・Lawrence D. Burnsほか著、2,940円(税込)、352ページ、東洋経済新報社、2012年2月
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 マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授や、米GM社の元副社長らが未来のモビリティについて論じた。米国で2010年3月に刊行されたものの訳書だが、内容に古さはない。著者らが唱えるのが「USV(ultra small vehicle)」という概念。具体的には、GM社が2010年に発表した小さな電気自動車(EV)「EN-V」を開発した背景を基にUSVとは何かを示す。

 USVは、都市とエネルギの問題を解決するためにITや通信、電力の技術などを取り入れた小型EVである。この考え自体は最近よく聞くが、本書が興味深いのは、その実現のために市場のメカニズムを積極的に活用しようとする点にある。道路と駐車場の交通料金や電力料金、車両のレンタル料金に始まり、保険料や広告料などの価格を変動させることで、USVは最適な未来のモビリティになると論じる。

 ただ、本書で惜しいのが1点。米国の著書らしいと言えるが、鉄道などとUSVに関連した記述が少ない。モビリティの未来を考える上で、公共交通機関は大事な要素。その点をもっと考察してほしかった。

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