自動車の例でもう少し具体的に説明しよう。まず自動車の運転席の周囲にセンサーを設置し、これらによってドライバーの顔色や心拍数、呼吸数などを測定する(図2)。そのデータの分析により、ドライバーに疲労がたまっていると推定できたとする。

図2●自動車を取り巻く意味理解
(出所:半導体産業研究所)
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 システムはすぐに現在位置周辺の渋滞情報や天気予報を参照し、なるべく渋滞がなくて道幅が広く運転しやすい経路を選んでドライバーに提示する。疲労が激しい場合は速度を自動制限したり、安全運転のための注意をたびたび喚起したりということを自動で実行する。

 さらに、路車間の密接な連係動作も考えられる。そのドライバーの自動車の前方に、見通しのよくない横道からボールが飛び出してきたとしよう。横道に設置されたセンサーやマイコンによって子供の声や足音などを感知し、ボールを追いかけて子供が飛び出す可能性があることを判断、これを自動車側に伝える。これにより、疲れているドライバーが反応するよりも早く自動車がブレーキを掛ける。このように状況を総合的に判断して安全を確保することを自動車が行う。自動車が意味理解しているのである。

 この意味理解は、在宅医療にも応用できる。現在なら病院で経過観察が必要とされる患者でも、意味理解のシステムを設置すれば、自宅で治療することが可能になる。普段とは異なる歩き方や行動などから患者が認識する前に病状の悪化を判断し、緊急時には意味理解のシステムが病院へ自動で連絡する。

意味理解に欠かせない異業種連携

 このような意味理解のために重要になるのが半導体だ。ただし、その進化の方向性は従来とは大きく異なる。