半導体メーカーの業界団体である半導体産業研究所(SIRIJ)が、人々の生活を快適にする「スマート社会」に向けた新しいビジョンをまとめた。

 同研究所は、ビジョンの策定に当たって2011年度に異業種連携による協議会をスタートさせた(図1)。自動車メーカーやITベンダーなど、半導体とは異なる業界で先駆的な取り組みをしている企業にヒアリングを実施し、まず目指すべき「スマート社会像」を描くことから始めた。次に、その将来像を実現するために半導体ができることは何かなど、10年後の半導体の機能を想定しながら検討を重ねることでまとめたものだ。

図1●半導体産業研究所協議会の様子(写真:半導体産業研究所)
図1●半導体産業研究所協議会の様子
(写真:半導体産業研究所)

 スマート社会に向けては企業や国、地方自治体がさまざまな試みを始めている。しかし、なかなかその出口が見つからない状況にあるのが実態だ。そんな中でまとめられた今回のビジョンは、公的機関が進めている検討の内容にも強く影響を及ぼし、日本の産業界全体にとっても意味があるものとなりそうだ。

空気を読んで判断する

 同ビジョンは、センサーネットワークを大きく進化させることによって人々の生活をより安全に、より快適にする仕組みを目指すというものである。打ち出したコンセプトは4つある。(1)意味理解、(2)無給電、(3)百年耐久、(4)自己成長である。2011年度は、このうち(1)の意味理解に焦点を当てて協議会で議論を重ねた。

 意味理解とは、さまざまなセンサーによってデータを測定することで、人の感じていることや体調、周囲の状況などをシステム側で総合的に把握することを指す。例えばエアコンの場合、室内にいる人の数や気温などを測定して空調方法を決めるが、意味理解が進むと、部屋にいる人が暑いのか寒いのか、風邪をひいているのか、食事をしているのかなどを考慮した上で空調を実施する。センサーとその測定データを分析するマイコンを自動車や住宅に設置することで、自動車や住宅が人々に快適と安全を提供する。