ところが2002年、坂本氏がUMCジャパンを去り、同社を台湾人の経営陣が管理するようになると、状況が一変したという。当時の事情をよく知るUMCの台湾人幹部は話す。「日本人社員らは、『かつて日本が統治していた台湾に、いまは反対に管理されている』との感情を抱くようになった」と指摘。その上で今周刊は、シャープとの提携においてフォックスコンも、「立場が逆転した」という日本人の感情と直面するのは必至だと予測。その上で、その感情をいかにコントロールできるかが、提携の先行きを占う1つのカギになるとの見方を示した。

 さらに同誌は、かつて台湾と日本の「文化の差異」をかき消したストックオプション制度が、経営の悪化で急速に効力を失っていったと指摘する。UMCジャパンで勤務した経験を持つある台湾人幹部は話す。「1999年には世界の主流だった8インチのウエハ工場だが、12インチ工場の台頭で次第に時代遅れになった。四半期に平均8億円の赤字を出すようになると、株価は下がり、配当も出せなくなった」。するとその後、ストックオプション制度がもたらしていた会社への求心力が、日本人社員の中で急速になくなっていったようだったという。

 フォックスコンの郭氏は、『日経エレクトロニクス』(2012年5月14日号)とのインタビューで、自身がシャープと共同経営することになる旧シャープ堺工場の運営会社「堺ディスプレイプロダクト(SDP)」を5年以内に上場したいとコメント。さらに、台湾では当たり前になっている自社株を社員が保有する制度をSDPにも導入したいとの考えを示している。これに対して今周刊の記事は、持ち株制度が、日本人にとってはモチベーションの向上にはつながらないのではないかとの疑問を呈している。