ではなぜ、郭氏は一方的にNECとの交渉を明かしたのか。複数の台湾メディアが一致して指摘したのは、「フォックスコンがシャープの特許や技術を盗むのではないか、という日本の疑念を晴らすため」という点だ。

 先のcnYESの記事は、「フォックスコンのシャープに対する出資が伝えられると、日本ではメディアや業界で即、『フォックスコンの目的は技術を盗むことにある』との見方が出た。郭氏が今回、巨費を投じてNECの特許を購入すると明かしたのは、『フォックスコンは技術を盗むような輩(やから)ではない』ということを、日本に対して示す意味がある」と分析した。

 台湾の経済紙『工商時報』も同日付紙面で、「『フォックスコンとシャープの恋』について、日本では当初、シャープの技術が流出するとの懸念が盛んに出た」と指摘。その上で、「巨費を投じてNECから特許を購入するという実際の行動を示すことで、郭氏は『知的所有権を極めて重視する人物』だということを、日本に対して印象付ける狙いがあった」との見方を示した。

 台湾メディアが一斉に同じ論調で郭氏とNECとの一件を報じたのは、これが郭氏のみならず、台湾から日本へのメッセージでもあるためだろう。そのメッセージとは「台湾と日本の連合で韓国に対抗していこうと言っているのに、日本はなぜ、『台湾が技術を盗むのではないか』というような警戒心が先に来るのか」というもの。今後、台湾と日本企業との協業がさらに増えていくことが予想される中、日本の見方を台湾はどのように受け止め、感じているのかということを留意しておいてもいいように思う。