先日、ある地域で開催されたLED関連のセミナーに参加しました。主に地域内の企業から200人前後が参加するセミナーでして、私は日経エレクトロニクスで取り上げてきた記事を中心にLED照明産業の状況を講演させていただきました。

 LED照明は普及期のまだ入り口にあります。このセミナーは有望市場に向けて、同地域でのLED関連産業を支援する取り組みの一環として開催されたものでした。参加者からは、「LEDの主要特許がこれから切れていくと聞くが、それがLED単価に与える影響は?」、「蛍光管の代替として直管型LEDは市場面でどこまで期待していいのか」、「LED産業の集積地は成立し得るのか」など、様々な質問を受けました。期待と不安が入り混じった印象を受けるケースも多々ありました。確かに、LED照明市場は期待と不安が入り混じる状況です。

 日本市場では東日本大震災に端を発する電力不足により、LED照明への期待値は大きくなりました。LED電球は飛ぶように売れ、電球の販売数量に占めるLED電球の比率が一時期は白熱電球を上回りました。現在、白熱電球が再度販売数量トップに立っていますが、LED電球の比率は3~4割を占めています。白熱電球とLED電球の価格差が10倍はあることを考えると、販売価格ではLED電球が圧倒的に1位といえます。

 その一方、日経ビジネス8月27日号の特集「LED照明の光と影」にあるように、国内でのLED電球の価格下落が顕著です。価格下落の速さだけ見れば、薄型テレビをしのぐとの指摘もあります。国内のLED電球市場が早晩ピークアウトし、縮小に向かうとの見方も出てきています。

 こうしたことがあり、機器メーカーや家電量販店などは、天井灯に使って部屋全体を照らすLEDシーリングライトに開発や販売の力点を移しています。LEDシーリングライトは2万~5万円程度の品種が多く、まだまだ高価なのですが、販売は好調といえます。GfKジャパンによれば、国内における2012年6月の販売数量が7割に達したとのこと(詳しくは、日経エレクトロニクス8月6日号の特集にあり)。家電量販店の売り場にはLEDシーリングライトがずらりと並び、蛍光灯シーリングライトは隅に追いやられている状況です。あたかも、液晶テレビやPDPテレビが数多く並び、CRTテレビが申し訳程度に端に置かれていた2000年代初頭のテレビ売り場のようです。

 LEDシーリングライトの販売はしばらく好調に推移するのでしょう。ただし、LED電球と同じ道をたどる可能性は否定できません。1万円を切る特価品が至る所で見られるなど、メーカー間の製品競争が激しくなっているからです。薄型テレビの過去から現在までの流れと重なって見えるのは私だけでしょうか。そうは言っても、市場自体が伸びているうちは手を引けないでしょう。引くかどうかの見極めが問われます。

 世界的に見ると、LED照明の普及はこれから。LED照明器具や要素部品の出荷個数の伸びは期待できるのですが、収益に結びつける策が難しくなりそうです。LED照明を活用するサービスなど、LED照明が大量に出回るからこそ生まれるビジネスが期待されるのかもしれません。一例が、照明器具の単体売りではなく、部屋全体やビル全体、街全体などのすべての照明を制御するシステムでしょう(日経エレクトロニクス別冊「LED2012-2013」に関連記事あり)。他にも案があるはず。それが何かを、模索したいと思っています。