今回紹介する書籍
題名:再聯想:聯想国際化十年
著者:張小平
出版社:機械工業出版社
出版時期:2012年1月

 今回は『再聯想』の3回目。

 前回、前々回はLenovoの過去についての記述をご紹介してきたが、今回はLenovoの現在、そして未来に向けての戦略についてご紹介する。本書は張小平というビジネス書作家が書いたものだが、創業者の柳伝志と現CEOの楊元慶が推薦文を寄せている。Lenovoの今後の方向性に関する記述についても一定の信頼を置いていいと言えるだろう。

 本書で書かれている「Lenovoの未来」で注目すべきポイントは「中国モデルの複製」と「現地化」だ。

Lenovoはインド、ロシアなどの新興市場を「中国の5~10年前の状態」ととらえている。それゆえに基本的な成長戦略はどこの国でも「中国モデルをコピーして応用」である。本書でも、ロシア、インド、ブラジルなど個々の国でのLenovoの成長の軌跡を詳しく述べているのだが、基本的には中国でやってきたやり方を踏襲するという姿勢は変わらない。また、同社では今後の発展が見込まれる市場として、中国にブラジル、インド、ロシア、メキシコ、インドネシアを加えた「トップ6」という言い方をしている。これらの国々を中心に「中国でのやり方を複製しながら改革していく」という形で国際化を果たしていこうとしているということだ。

 本書の最後の章では「未来争奪戦」として、今後のLenovoの方向性を示している。前々回紹介した通り、専門化を進めPC一筋に伸びてきた同社だが、今後は多角化の方向へ行くという。2010年に「Lenovoモバイル3傑」として「楽phone」「Skylight」「IdeaPad U1」という3つの商品を挙げている。それぞれ「スマートフォン」「スマートブック(スマートフォンとネットブックの中間の機種)」「携帯型ノートPC」だ。本書でも紹介されているようにアプリケーションの開発にも進出している。これまでの「専門化」路線とは異なるように思われるが、従来のPCがなくなることはないと同社は判断しているようで、これらの多くの機種はそれぞれ相補的な存在でどれかがなくなるということはないと述べている。

 では、Lenovoの今後の強みというのは何なのか。本書ではそれを「現地化」であると述べている。それぞれの市場に合った商品を作り続けることが生き残りの道だというのだ。ここで大きなポイントとなるのが同社の「現地」は巨大な市場を持つ中国であること。中国市場の特殊性を知り抜いているLenovoはスマートフォンにせよ、それぞれのアプリにせよこの巨大市場を押さえる商品をつくり得るポテンシャルを持っているのだという。

 結論が「巨大市場を背景にしているから成長の余地が大きい」ということになると我々日本人には応用が利きにくいように思えるが、本書を読んで感じるのは同社の専門化と多角化の使い分けの巧みさである。前々回に述べたように最初に「双模式」という形で買い手に合わせた二つのマーケットスタイルをそれぞれ徹底させた。IBMとの買収を進め、国際化路線を取る際には扱う商品はPCだけに集中した。そして、スマートフォンなど取扱商品を増やした際には「中国」という「現地」を徹底的に活かしている。

 このように手を広げるところと対象を絞るところをはっきりと分けどちらも徹底していることが躍進の秘密なのではないか、と本書を読んで感じた。

  今後、同社がどのような道を歩いていくか見ておきたいと思う。