大型パネルについては、最終需要の低迷(絶対水準では欧州が弱く、傾向としては新興国の成長が鈍化)とバリュー・チェーン全体の在庫上昇が気がかりではある。しかし、これまでの在庫水準が低かったこともあり、国慶節、年末商戦を控えセット・ブランドからのパネル需要はほぼ想定通りの増加となっている。

 一方、パネル・メーカーの稼働率は、6月の台湾の地震、韓国の停電などの外部要因の影響に加え、台湾メーカーは特に需要に合わせた生産を続けていること、また39型や50型など新サイズへの移行などから、パネル需給は均衡状態が続いている。稼働率は第3四半期(3Q)に86%と予想から変わりはなく、生産面積は前四半期比(QOQ)で+11%と従来のQOQ+9%から引き上げたものの、繁忙期にしては盛り上がりに欠ける展開には変わりない。

 2012年末に向けて、パネル・メーカーは需要に応じた生産調整を実施する前提で、パネル需給は微妙な均衡を維持するとみており、パネル価格は大きく上がりも下がりもしない状況がしばらく続くだろう。

北米は堅調、欧州は底割れ、新興国の成長は鈍化

 液晶テレビの最終需要は悪化傾向が続くが、想定範囲内での推移である。

 米国では、5月下旬ごろから46型以上の大型サイズのハイエンド、直下型LED採用のミドルエンドなどの販売が鈍化、在庫が堆積しつつある。6月は販売数量の対前年比(YOY)がこれまでの一桁成長から横バイか若干のマイナスに転じたとみられる。ただし、住宅販売の回復基調入りや、ローエンド製品の販売堅調もあり、7月は再びプラス圏に回復、粘り腰を見せている。

 欧州はドイツを除き前年割れが続いており、製品供給の抑制が販売悪化に追い付かず、再び在庫水準が上昇した状況に変化はない。日本国内はYOYで6割以上の減少ペースが続き低調だが当社想定線の推移である。新興国はおしなべて好調なものの、中国以外のアジア(インドなど)で成長率が鈍りつつある地域が散見される(為替減価の影響など、マクロ要因と考えられる)。中国は労働節商戦が不調に終わり若干在庫堆積しているものの、6月1日からの省エネ補助金制度施行により、基準に合わない製品の在庫一掃に腐心しつつ、新製品の投入を急いでいる。これはむしろポジティブなトレンドとなる可能性がある。

 パネル価格についての見方は、前述の通り、サイズによって状況は異なるものの、基本的に一定範囲内でのボックス推移(横ばい圏)の見方で変更はない。需給が逼迫気味のG7(第7世代)/G7.5(第7.5世代)で生産されるサイズ(40型、42型、50型など)は繁忙期を終える10月あたりまでは少なくとも需給逼迫が続く可能性が高い。しかし、他のサイズとの相対的な位置づけや、セット・ブランドの許容範囲を考えると、価格上昇の余地は大分狭まってきた。

 一方、需給が最も緩みやすいとみられている32型については、中国新興2社(BOE Technology Group社、China Star Optoelectronics Technology社(CSOT))の増産の動きが本格化してきたものの、韓国・台湾メーカーが他サイズへのシフトによる32型減産を進めており、32型のグローバルでの総供給量は700万/月程度で停滞、需給はむしろ逼迫感が出てきている。その結果、32型の価格は横ばいか小幅上昇となっている。しかしながら、セット・ブランドの許容範囲が小さいことと、パネル供給増懸念がくすぶり続けることから、大幅な値上げは想定しにくい。