最終回となる今回は、実務で必要になるCADデータの管理と活用について解説する。設計業務には、設計が主体の技術者、解析の技術者、生産の方法や計画の技術者、部品調達や購買の管理者など、多くの人が携わっている。製品開発のプロジェクトでは、複数の技術者が同時にCADデータにアクセスする。したがって、設計データを管理していないと、誰が、いつ、どの部分を設計したのか、あるいは編集したのか、分からなくなってしまう。

 PDM(Product Data Management)では、リアルタイムにファイルを管理している。具体的には、誰が、いつ、どのファイルを開き、保存したか、また、アクセス中のファイルがあれば、編集や保存ができないように閲覧のみを許可する、というような管理である。

 PDMの中では、構成情報(1つの製品を生産するために必要な部品の数と、その部品同士の組み合わせ方法に関する情報)を基にして部品単位のデータ管理(構成管理)を行っている。本連載の第5回目「アセンブリでは拘束やファイル構造に注意」で解説したように、アセンブリファイルは複数のパーツファイルとリンクしている。設計ではE-BOM(Engineering-Bill Of Material)と呼ばれる部品表が、生産ではM-BOM(Manufacturing-Bill Of Material)と呼ばれる部品表が必要になる。PDMでは設計データ(CADデータ)とE-BOMを管理している。そして、設計変更に伴い設計版数が上がるので、PDMではその全ての設計版数を管理している。

 3次元CADを単体で利用している場合はフォルダで管理することも可能であるが、複数の設計者がアクセスする環境では、PDMによるCADデータの管理が不可欠になる。そのため、3次元CAD利用技術者試験では、データ管理の知識が求められている。(PDMについては、公式ガイドブックのpp.149-152を参照)。