中国ではもはやFacebookが要らない?

 商品やサービスの開発に対する考え方は、生活習慣、国民性、経営理念などと密に関連している。サービスプロバイダ側の「急功近利」の企業文化と、サービスを受けるユーザー側の交友習慣が違うという「水土不服」の現象で、FacebookのようなSNSサイトは中国で生まれるどころか、Facebookのマネさえもうまくできていない。しかし、現在の中国では、たとえ海外のFacebookに中国国内からアクセスすることが可能になっても、あるいはFacebookが中国に進出してきても、Facebookが中国国内で流行する可能性は低いとの見方が大勢だ。

 中国のFacebook型SNSサイトの登録者数は、全サイト合計で約2.5億といわれる。かなり多いと見る向きもあるが、ほぼ同じ時期に発展してきた、新浪微博のような微博(Twitterをベースにして進化してきたSNSサイトのこと。登録者数は5億以上。新浪微博だけでも登録者数は4億近い)やTencent QQ(インスタント・メッセージをベースにして進化したSNSサイト。登録者数は7億程度)と比べてはるかに及ばず、影響力が低いことは否めない。「急功近利」と「水土不服」が重なり、Facebook型のサイトは中国では、主に、大学生と一部のホワイトカラーの間で使われているにすぎず、影響力はかなり限定されている模様だ。

 こうした状況を踏まえると、中国におけるSNSサイトの代表格は、新浪微博、またはTencent QQといえるだろう。しかし、それらは、もはやFacebookのようなSNSサイトではなく、中国ならではのSNSサイトである。

 では、新浪微博とTencent QQは、どうしてこんなにはやっているのか--。実は、その裏側には、中国のインターネット文化をよく理解して、模倣と改良を積み上げ、改良型のイノベーションをやり遂げてきたという進化の歴史がある。

 次回は、新浪微博とTencent QQが中国のSNSサイトにおける競争の中で成功した理由について紹介する。