なぜ中国のFacebookになれないのか

 中国のFacebookと自称するSNSサイトは、Facebookの成功に大きく貢献したオープン・プラットフォームという特徴を深く理解できず、表面だけを模倣したと考えられる。ユーザーの獲得という目先の目的ばかりに意識がいき、Facebookの真髄といえるオープン・プラットフォームの重要性に気づかなかったのだ。結果、ユーザーの気を引きやすく表面的なコピーが可能なゲームなどのアプリケーションやサービスの開発に終始した。

 それでも、幾つかのゲームが人気となり、そうしたSNSサイトの登録ユーザー数も急増した。しかし、特定のゲームの人気は永続的に続くわけではない。人気ゲームを提供し続けられないと、サイトの人気は落ちていく。実際、これらのサイトのユーザー数は近年伸び悩んでいるという。

 おのおののアプリやサービスができてから、プラットフォームをオープンなものに構築し直すのでは、もはや遅いと言わざるを得ない。既に建てられた建物を壊して、基礎工事をすると同じように、多大な苦労を伴うからだ。しかも、建築工事と同様、基礎工事がうまくできていない場合は上物として大きな建物を造りにくい。そのため、FacebookのようなSNSサイトが持っている威力が発揮されていない。

 その深層の原因は、やはり「急功近利」(功を急いで目前の利益を求める)の経営姿勢にある。目先の利益を追って、早く業績を上げようとすることは、技術のマネや技術の改良の深さにも大きな影響を与えた。

 加えて、Facebookの実名制は、中国の国民性や交友習慣と合わない。中国語で言うと、「水土不服」(他郷で水が合わない、土地にもなじめない)なのだ。中国においては、自分のプロフィルをネット上に公開して、友達を作ろうという文化はほとんどない。それよりも、匿名で情報を発信したり、有名人の発言やさまざま情報をフォローしたりシェアしたりすることに強い関心を持つ。つまり、自称・中国のFacebook型SNSサイトは、「変えるべきところを変えていない」「守るべきところを守っていない」のである。これが、中国のSNSサイトの競争で脱落した主な原因だろう。