世界各地で構築プロジェクトが進んでいる「スマートシティ」。そのポイントの一つが、街の中の人や機器をIT(情報技術)で密接に結びつけることである。

 例えば太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、クリーンではあるものの、天候による出力変動が激しいのでそのままでは使いにくい。しかし天候や需要の変動をITでとらえ、それをネットワークでスマートシティの隅々まで伝えれば、全体としてムダのない制御を実施できる。季節や時間帯などによって電気料金の単価を変えることでエネルギーの需要量を供給側からある程度コントロールする方法も検討されているが、ここでもITによる単価情報の提供が重要な役割を果たす。

 このようにスマートシティに住む人にとって、システムから提供される情報は大切なものであると同時に、常に触れることができる身近なものでもある。そこで「これほど接触率の高いメディアを放っておくのはもったいない」「広告をうまく使うとスマートシティの効果をさらに高められるのでは」と、広告関連のビジネスを模索する動きが活発になってきた。

沖縄県で周辺店舗の広告を配信

 『世界スマートシティ総覧 事業・サービス編』の発行に当たって日経BPクリーンテック研究所が調査した結果によると、広告関連でまず始まったのが、電気自動車(EV)を対象とした試みである。EVのドライバーは、常に燃料切れ(電欠)の不安を抱えつつ運転している。言い換えれば、蓄電池の残量や走行可能距離、充電ステーションの情報などをリアルタイムに知りたいという顧客ニーズが極めて高いわけだ。

 そのニーズに応えるため、近くの充電ステーションの位置などをきめ細かく提供する情報サービスが検討されている。この情報を送る際に、イベント情報や観光地の名所案内などを一緒に配信すれば、ドライバー向けの有力な広告媒体になる。

 その好例が、沖縄県でレンタカー会社などが連携して進めているEVの普及プロジェクトだろう。

 このプロジェクトでは、県内のレンタカーの1%にあたる約200台にEV(日産自動車の「リーフ」)を導入すると共に、県内18カ所に27基の急速充電器を設置する計画だ。急速充電サービスは、沖縄県内外の26企業が出資して設立したエー・イー・シーが行っている。

 同社は電欠の不安を解消するため、車載のカーナビやスマートフォンの画面に、周辺の急速充電ステーションの場所と利用中か空いているかを示す満空情報を表示できるようにした。現状の満空情報はタイムラグ(時間的な遅れ)があるので、行ってみたらほかの人が利用中だったということもある。

 そこで同社はこれまでの充電ステーションの利用データを分析し、満空情報の精度を高めつつある。この満空情報に、沖縄でキャンプを張っているプロ野球チームの動向などを加えて配信しているのだ。さらにこれを発展させて、周辺店舗の特売情報やレストランの特別メニューなどをリアルタイムに掲示し、広告収入を得ることも検討している。

北九州でタイムセール広告の試み始まる

 エネルギー分野では、経済産業省が進めるスマートシティプロジェクトである「次世代エネルギー・社会システム実証」の北九州プロジェクトで、動的に電力料金を変化させる「ダイナミックプライシング」の導入に伴い、ピーク需要時に電力価格の通知と共に地域の商店街のタイムサービスの情報を流す取り組みが始まっている。