米IBM社がSSDメーカーのTexas Memory Systemsを買収することが、8月16日に両社から発表されました(Tech-On!関連記事)。IBMといえば、かつてはパソコンやHDD、半導体製品などを製造・販売し、コンピュータのハードウエアの老舗とも言えるメーカーでした。

 ところが、垂直統合から水平分業への産業の変化、グローバル競争の激化により、2000年代初頭にIBMのハードウエア事業の収益は悪化。IBMはパソコンやHDDといったハードウエア事業を売却・撤退し、ITサービスビジネスに特化するという事業の転換を行いました。

 パソコンに関しては、水平分業化により、付加価値は米Microsoft社のOSであるWindows、米Intel社のCPU、韓国Samsung Electronics社のDRAMなどに移り、パソコン自体はコモディティー化しました。IBMは2005年にパソコン事業を中国のLenovoに売却しました。

 また、水平分業化されたOS、CPU、DRAM、HDDといった部品やソフトの業界では、厳しい価格競争と寡占化が進みました。その結果、IBMはこれらの部品の業界からも撤退を余儀なくされ、HDD事業を2002年に日立に売却しました。

 IBMはこうして、10年前にハードウエア事業から撤退したにもかかわらず、今なぜ、SSDメーカーを買収し、ハードウエア事業を取り込んだのでしょうか。IBMの現在の主力なビジネスは、金融や流通などのサーバーシステム、クラウドデータセンタやビッグデータを用いたデータ解析など、ITインフラとサービスです。

 その理由は、いままさに、SSDという革新的なハードウエアの出現によって、コンピュータアーキテクチャのみならず、サービスまでもが変わろうとしているのです。携帯電話機、パソコン、サーバーなど現在のコンピュータでは、アクセス時間が、nsオーダーのCPUやSRAM、数10nsのDRAM、10msのHDDと階層構造になっています。このようなコンピュータのアーキテクチャは数十年の間変わりませんでした。