マシンに乗り込んだタジマモーターコーポレーション会長兼社長の田嶋伸博氏
マシンに乗り込んだタジマモーターコーポレーション会長兼社長の田嶋伸博氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「ええっ、リタイヤ。行かなくてよかったあ」。取材に行くつもりであきらめたパイクスピークから悲報が届いた。8月12日、米コロラド州で開かれた「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」。走り出して1km、あんなに予選で速かった「チームAPEV with モンスタースポーツ」(ドライバーは田嶋伸博氏)がモータから白煙を出してストップ。「EV(電気自動車)で総合優勝」という野望は来年までお預けになった。

 「モータの故障」というのは皮肉としても悲しすぎる。『日経Automotive Technology2012年9月号』に、「モーターでモータースポーツ」という親父ギャグなタイトルの特集を書いたばかりだ。パイクスピークは空気が薄く距離が短いことを根拠に、EVがエンジン車に対して「いい勝負になりそうだ」と書いてしまった。ま、いい勝負はしてるんですけど。

 禁じ手であることは分かっている。「たられば」をしてしまおう。

 各車は8月8日にコース前半、9日にコース中盤、10日にコース後半と、別々にタイムを計測した。何度か走ったうち、それぞれの最短タイムを3日分合計すると、EVクラスで優勝した「TEAM SHOW」の「EV P002」(ドライバーは奴田原文雄氏)は9分55秒23、田嶋車は9分29秒37になる。田嶋車は奴田原車より4.34%速い計算だ。…何だか奴田原車が敵(かたき)役のように見えてきた。あくまでも基準ですからね。奴田原さんごめんなさい。チーム代表の神子力さんごめんなさい。

 たらればで、田嶋車が決勝を走り通したとする。奴田原車の決勝タイムは10分15秒38。予選の3区間を足したよりも少し長いが、それぞれのスタート、ゴール地点の問題だから、気にしなくていい。田嶋車は、これより4.34%速いと9分48秒92になる。

 惜しい。全体の優勝タイムは9分46秒16、2位は9分46秒18という接戦だったから、たらればでも3位ということになる。その差2秒76。完走しても勝てなかった可能性が高い。

 あ、しまった。ひいきの引き倒しだ。傷に塩をすり込んでしまった。いや、事実は書かなくてはならない。田嶋さんごめんなさい。お世話になったタジマモーターコーポレーション広報の石倉さんごめんなさい。あちらこちらごめんなさい。来年に向けて、継続して取材で食いついて行きます。あと2秒76まで迫ったじゃないですか。「2013年、優勝への軌跡」書きます。よろしくお願いします。