事務所の棚にはきれいに番号が振られたファイルが整然と並べられていて、番号が一つも欠けていない。そして、驚くのは事務職員の机の上だった。ちょうど事務所棟に見学に行ったのは、就業時間も過ぎてほとんどの事務員が退社した後だった。その閑散とした事務所の机の上には、パソコンがきれいに並べられているだけでほかには何もない。まるで、人が働いていなかったのではないかというほど、ものが片付けられている。ゴミ箱も単純な、『燃える・燃えないゴミ』を区分するだけのものではなく、『燃えないゴミ』を資源ゴミ、回収ゴミなどをはじめ7種類も分類したゴミ箱が設置されている。そのゴミ箱もきれいに清掃してから社員は退社しているのだ。

 私がこれまで見てきた事務所では、たいがい机の上にはうず高く積まれた書類の山があり、食べ物まで散乱している。そんな一般的な中国企業の事務所とは似ても似つかない。この工場は、すべての箇所において日本の一般的な工場よりはるかに整理、整頓が行き届いているのである。

 「この2年間、労働災害はゼロ、不良品はほとんど出さなくなりました。機械の停止回数も格段に減りました。社員の士気もあがり退職者もほとんどなくなりました」
と責任者は言う。

 そんな工場もつい2年前まではひどい状態だったようだ。