日経ものづくり

最終回:技術の人材ポートフォリオ構築

井上 潤吾=ボストン コンサルティング グループ
2012/08/17 15:30
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技術人材ポートフォリオ構築の必要性

 これまで自社技術の資産価値評価(第1回)、新技術の獲得(第2回)、効果的かつ効率的な自社開発(第3回)、外部からの技術導入(第4回)、特許活用(第5回)について説明してきました。これらを実現して事業価値を上げるためには、それぞれに秀でた技術人材をそろえる必要があります。特に、多種多様な技術群を保有する企業にとって、それらをしっかりマネジメントできる人材をそれぞれ育成することは、事業や顧客のポートフォリオを構築することと同じくらい重要です。なぜなら、いくら競合優位性のある技術要素を現在保有していたとしても、それを維持し、向上させていける人材がいなければ、事業や顧客と同様に時代とともに陳腐化していくだけだからです。最終回である今回は、技術人材のポートフォリオ構築について取り上げます。

 筆者の感覚では、技術人材のポートフォリオをしっかり管理し構築している企業は、それほど多くはありません。その理由は、将来自社が必要とする技術要素の見通しが立っていないため、どの技術にどのレベルのスキルを持った人材がどれほど必要か分からないことにあると思います。実際、新技術は時代とともにめまぐるしく進化しますし、多岐多様に分化もしていきます。

 そうした環境下でも、自社のコア技術を定め、その技術を形成していくことが重要であると筆者は主張してきました。それでは、どのようにして技術人材のポートフォリオを構築していったらよいのでしょうか。図6-1にその例を示します。技術要素としてAからFまでの6つが特定できたとします。まず、それぞれの技術人材を、スキルと経験年数の2軸の座標上にプロットしてみます。すると、例えば技術要素Aでは、経験年数が10年以上あり、スキルも最上級の技術者が8人もいました。これだけいれば技術要素Aについては当面安泰だと考えられます。しかし、技術要素Bを見てください。スキルが中級程度の人が数人いるだけで、経験年数が長い人でもスキルが低いことが分かります。さらに技術要素Eになると、中級すら1人しか存在しないという壊滅的な状況になっていることが分かります。このように、技術人材のポートフォリオを見える化することで、課題が浮き彫りになってくるのです。

図6-1 技術人材ポートフォリオの例
[画像のクリックで拡大表示]

 なお、図6-1では、技術要素だけの例を示しましたが、技術部門全体の人材ポートフォリオを考えるのであれば、技術要素以外の切り口も必要になります。製品全体を統括して開発するプロダクトマネジャー、技術部門の企画を行う戦略企画、品質を管理・評価する品質管理、新規事業を立ち上げていくプロデューサーなどの技能も必要だからです。それらについても図6-1の人材ポートフォリオで捉えると、技術部門全体の人材が見える化できます。

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