製造される物は最終的に消費者の元へと運ばれる。その意味では、製造は消費者を常に意識してきた。アルビン・トフラーはプロシューマーという言葉を創り上げた。消費者であるコンシューマーと製造者であるプロデューサーが一体化していくという考えである。

 確かに、工場と市場が近くなってきた。20世紀は月次の見込み生産の時代であったが、21世紀はPOS(point of sales)と結びついた在庫管理、流通、生産の時代である。POSだけでなく、SCM(supply chain management)とかERP(engineering resource planning)などの言葉が幅を利かせている。

 とりあえず、コンビニで在庫切れを起こさないように日に4回の多頻度で小口配送することが入口。最近は、消費者とコラボした商品企画まで現われている。これは、消費者が製品設計をして一定数確保できたら製品化するものである。同じように、Web上でオプションの組み合わせを許す受注生産製品も出てきている。正に、トフラー先生が予見した時代の花が開きつつある。

 これは、フォードに代表される20世紀の大量生産方式とは違うものである。すなわち、大量生産が多数決なら、受注生産は少数意見の尊重。個別生産である。もちろん、大量から個別までスペクトルの範囲が広い。中には、ニッチ狙いもあるだろう。

 21世紀はマスの時代ではないようだ。平均値である視聴率を追いかける地上波テレビ番組が面白くない。多チャンネル時代においては平均値は入口である。ニッチまで掘り下げた番組作成が求められる。

 製品も同じである。マスではなく、ニッチ狙い。さらに、個別受注生産へと進みつつある。「言いたい放題」、ここでは少し視点を変えてみよう。ニッチ狙いは当たり前。消費者のスペクトルが広がった影響を考えてみよう。

 消費者が一体の概念ではなく、商品設計までできるスキルに富んだ消費者から、一人では携帯電話機も操作できないデジタル・デバイドと呼ばれる消費者まで多層化している。製品企画では、どの層を狙うかを論議することが当たり前になっている。

 しかし、販売を企画している商品にとって最悪の消費者層に対する認識が甘いように思える。ある層をターゲットにした製品は、別な層には危険な場合もある。煙草に火をつけるライターのターゲットは喫煙者層、すなわち、成人である。しかし、子供にとってライターは魅力的であり、火遊びが原因となった火事は今でも大きな問題である。最近は、ライターへ新たな規制が始まっている。

 同様に、圧電着火型のライターは電子機器にとって脅威である。電気火花で着火するライターは強烈な電磁波を発生する。これはコンピュータを使う機器にとっては脅威である。実際、パチンコ台に密着させて点火を繰り返せば事情を聞かれるだろう。

 消費者のスペクトルの広がりを認識し商品企画でどの層を決めた後、次にしなければいけないことはその製品にとって最悪の消費者の想定である。安全上の問題、セキュリティの問題などなどを想定して対策を事前に講じる必要がある。ターゲットとする消費者ばかりに意識が向かっていると、とんでもない問題に巻き込まれる恐れがある。表の流れが読めたら、それをひっくり返し、裏を眺める必要がある。