ただ、パネルを消化するためというが、フォックスコンの台湾の社員は1万人というから、数としてはたかが知れている。一方、同社は中国に120万人の従業員を抱えるが、そのほとんどは一部屋に数人が同居する社員寮住まい。大画面テレビを売る対象にはならない。内部向けだけでなく、一般市場にもこのテレビを投入すると見る方が自然だ。

 そこで市場や業界で関心が高まっているのが、複数のブランドに対して受託生産サービスを提供しているフォックスコンが、この激安テレビのブランド名をどうするのかという点。

 これについては台湾紙『中国時報』(2012年7月31日付)が台湾業界筋の話として、フォックスコンがこのテレビを「独自のブランド名」を付けて販売すると報道。さらに中国のIT専門メディア『駆動之家』(同日付)は、フォックスコンが「シャープ」でも「フォックスコン」でもない新たなブランドで、まず台湾に投入、その後中国での販売を計画していると報じている。中国時報はさらに、フォックスコンの激安テレビが市場に参入することで、激烈な価格戦が起こることを競合各社が警戒し始めていると紹介している。

 フォックスコンがらみで最近、台湾・中国メディアの報道が過熱しているもう1つの話題は、同社がほぼ独占的に生産を受注したと目される米Apple社の次世代スマートフォン「iPhone 5」の発売時期。台湾紙『旺報』(同日付)は、フォックスコンがiPhone用機構部品の生産を手がける中国山西省晋城の工場で、新たに1万2000人を採用。iPhone 5の同年9月発売に向け、フォックスコンが生産を本格化した証拠だと報じている。iPhone 5の同月投入が事実なら、先の激安大画面テレビの発売時期と重なることになる。iPhone 5の発売時期は? フォックスコンの出すテレビのブランド名は? 価格は? サイズは? 売り出す地域は?--この秋も、EMS業界はフォックスコンが話題を席巻する状況が続くようである。