2012年7月下旬、4年に1度のスポーツの祭典、ロンドン五輪が始まった。筆者の住む中国は、開催国だった前回の北京五輪で金51個を獲得し首位だった。今回もこの原稿を書いている大会6日目の時点で金17個で首位と、順調な滑り出しを見せている。

 EMS(電子機器受託生産)/ODM(Original design manufacturer)業界でも、中国選手団のメダル量産を喜んでいる。世界最大のテレビ市場となった中国の選手が活躍することで、受託生産を手がけたテレビの売り上げが、大会中でも駆け込みで増えることが期待できるからである。

 家電の大型商戦というと、年末のクリスマス商戦が挙げられるが、中国にはこのほか、大型連休に伴う商戦が例年、3回訪れる。1~2月にかけての春節(旧正月)商戦、5月初頭の労働節(メーデー)商戦、そして10月初頭の国慶節(建国記念日)商戦がそれだ。

タイトル
中国Hisense社(海信集団)のスマートテレビの広告

 ところが2012年は、欧州債務危機を背景とする世界的な景気減速の影響を受け、中国でも大型商戦の家電販売がいまひとつ伸び悩みを見せている。中国の市場調査会社、All View Consulting(AVC)社(奥維諮詢)の統計によると、中国メーデー3連休のカラーテレビ販売台数は前年同期比8%減の145万台にとどまった。一方で、家電メーカーや量販店がメーデー商戦と銘打ってキャンペーンを展開した3週間(同年4月16日~5月6日)の液晶テレビ販売台数は、前年同期比2%増の357万台と増やしたが、これも市場やメーカーの事前の予測を下回る結果となっている。

 こうしたことからテレビ業界ではロンドン五輪によるテレビの需要増に期待を寄せているが、大会3日目を過ぎたあたりから中国メディアが各地のテレビ販売の状況を伝え始めている。例えば、上海に隣接する浙江省の省都(県庁所在地に相当)杭州の日刊紙『都市快報』(同年8月1日付)によると、家電量販大手の中国GOME Electronics社(国美電器)の杭州市内に展開する店舗では、五輪の開幕直前からテレビの売り上げが伸び始め、平日で1日当たり300台、土日は同1500台と、前月比15%増の勢いで売れている。購入理由の大半は「オリンピックを大画面で観たい」というもので、42型以上の大型がよく売れているという。

 一方、ロンドン五輪を機に3Dテレビの売り上げが伸びていると伝えているのは中国紙『IT時報』(同年7月31日付)だ。同紙によると、国美電器上海市場部の葛森マネジャーは、「スペインの優勝で幕を閉じた6月のサッカーのユーロ2012とロンドン五輪効果で、当社の上海地区では3Dテレビの売り上げが35%伸びた」と指摘。直近ではテレビ販売全体の5割前後を3Dテレビが占めているとしている。