今年も「節電の夏」がやってきました。ちょうど1年前は、震災後の電力不足を乗り切ろうと、多くの消費者が節電に取り組んでいました。日経エレクトロニクスでも、蓄電池を活用してピーク・シフトを進める「蓄電生活」が始まるという内容の記事を書いたのを覚えています。

 それから1年が経過した今、果たして蓄電生活は定着しているのでしょうか。今年再び取材した印象では、徐々に定着しつつあると感じました(日経エレクトロニクス2012年8月6日号の特集「節電の夏、再び」をご覧ください)。その一つの例が、蓄電池を搭載した扇風機です。2011年はベンチャーなどの製品が中心でしたが、2012年は東芝が製品化するなど、新たなジャンルとして定着する動きが見えています。

 2012年3月には、「定置用リチウムイオン蓄電池導入促進対策事業費補助金」に関する一般購入者の申請が始まったことで、定置用蓄電システムにも注目が集まっています。蓄電池の価格も下がっており、三洋ホームズでは2.1kWhだった容量を6kWhに増やした住宅用蓄電システムの販売を開始しました。

 家庭だけではありません。オフィスでも蓄電池の活用が進んでいます。最も驚いたのは、大和ハウス工業のオフィスです。天井のLED照明をすべて消灯して、卓上のLED照明だけで手元を照らしていました。卓上LED照明とパソコンには、定置用蓄電システムから電力を供給します。先進のオフィスでは、2011年にLED照明への変更などを完了しており、残る対策として蓄電池の導入が進んでいるのです。

 可搬型の蓄電池を販売する高砂製作所によると、オフィス向けの蓄電池の引き合いは2012年に増えているといいます。2011年は停電対策として自家発電装置をレンタルしていた会社が、2012年は運用の手間が少ない蓄電池に置き換える例が多いそうです。また、2011年に蓄電池の導入を検討したものの予算の確保が間に合わず、2012年の導入になった例もあります。電力不足による停電を回避する用途だけでなく、雷が発生している状況でもパソコンなどで仕事を続けるために蓄電池を導入する顧客もいるそうです。

 この他にも、ガンダムが立つ東京都内の商業施設には、蓄電池と太陽電池を搭載したデジタル・サイネージが2012年に設置されました。このように、蓄電生活は着実に定着する方向へと向かっています。
 ただし、蓄電池を搭載した機器の販売がすべて好調なわけではありません。2011年に話題になった蓄電池搭載テレビは、家電売り場の片隅にひっそりと置かれていました。何でも蓄電池を搭載すればいい、というワケではないようです。