日中国交正常化40周年

 わが国の野田佳彦首相は2011年の年末に訪中し、胡錦濤国家主席、温家宝総理と会談し、「戦略的互恵関係の構築」を再確認した。今年2012年は日中国交正常化40周年であることから、「日中国民交流年」とし、多彩な交流を展開することも合意した。

 当協会は第38回訪中団を4月下旬に派遣し、習近平国家副主席と会談した。習氏は「中日両国にとって、長期的視野に立った政治的相互信頼の深化が必要だ。敏感な問題を適切に処理することが重要であり、コントロールできない局面にしてはならない」と語った。

「存小異、求大同」

 40年前の1972年9月29日に日中国交正常化が実現した時の情景は、今でも鮮明に記憶している。北京での首脳会談で周恩来総理は二つの言葉を語った。一つは「存小異、求大同」であり、もう一つは「前事不忘、後事之師」である。前者は「小異を残して、大同を求める」、後者は「過去を忘れず、未来の導きとする」の意である。

 この40年を振り返って見ると、日中交流は経済、文化、社会のあらゆる分野に拡大した。経済分野で言えば、10億米ドルに過ぎなかった日中貿易額は3000億米ドルを超え、中国はわが国最大の貿易相手国になった。さらに今年5月に日中韓三国投資協定が調印され、来年年初には発効する。年内には日中韓三国自由貿易協定(FTA)交渉も開始される。日中の二国間経済関係は、経済のグローバル化の潮流の中で、東アジア地域の多国間関係へと発展しつつある。まさに「大同を求めた」大きな成果である。

未来のため新しい試みを

 しかし、今年に入って日中間にはきしみも目立つ。尖閣諸島の領有権をめぐる主張の対立は現場での紛争に発展しかねない情況も生まれている。よく考えて見ると、そのほかに民間賠償問題、慰安婦問題などについても、日中双方で見解が異なっている。いずれもわれわれが周恩来の言葉を日本流に理解し、「小異を捨て、過去を忘れて」しまい、敏感な問題を「棚上げ」してきた結果ではなかろうか。「賠償問題は解決済み」、「領土問題は存在しない」として、中国側の問題提起を一切受け付けない「問答無用」の態度では、戦略的互恵関係を構築する基礎となる政治的相互信頼を深めることはできない。

 国交正常化40周年にやるべきことは、華やかな記念行事を行うことではない。未来の50周年、60周年さらには100周年を見据えて、その時にあるべき日中関係の姿を描いて、その姿に一歩でも近づくための新しい試みを一つでも実行することが大切だと思う。