2012年7月9日、米経済誌フォーチュンは2012年版世界企業500社番付(2011年の売上高ベース)を発表した。中国大陸の企業は73社(香港を含む。台湾は除く。台湾を含めると79社。フォーチュン中国サイトより)がランクインし、国別で初めて日本を抜いて2位に浮上した。日本は68社で3位だった。景気低迷の日本を追いかけ、高度成長を続ける中国経済の勢いを改めて示した。首位は米国で132社だが、10年連続減少している。日本では注目されていないフォーチュンの世界企業500社番付は、近年、中国国内のメディアが大きく報道する1つの定例行事になっている。今年は、ランクイン数で日本をはじめて超えたことから「歴史的な突破」と報じられた。もっとも、ランクインした73社は、インフラ系の企業が圧倒的に多い。「車庫」や「町工場」から生まれて、イノベーションで成功した企業は極めて少ない。現在の中国企業のグローバル競争力、特にイノベーション力が反映されていないと見る人々も多い。

フォーチュン500社関する見方

 中国最大のポータルサイト「sina.com」は、「2012年フォーチュン500強」の特別ページを開設した。はそのトップページの一部である。「財富」は、中国語でフォーチュンの意味だ。

タイトル
ポータルサイト「sina.com」が開設した「2012年フォーチュン500強」の特別ページの一部

 実は、このページの右側には2つの設問があり、ミニ調査を実施できる仕組みになっていた。その設問とは、以下のような内容のものである。
第1問 そのランキングは企業の本当の実力を反映できるか
 ①できる ②できない ③分からない
第2問 中国大陸企業として73社がランクインしたことに対してどう思うか
 ①喜ぶべきことである ②喜ぶべきことではない ③特にない

 第1問については、②を選んだ人が約7割、①を選んだ人が約1.5割だった。フォーチュン500にランクインされた企業は売り上げだけが評価基準となっている。このため、企業の本当の実力といえる収益力や、業界の発展を牽引する研究開発力、斬新な商品やサービスを世の中に送り出すイノベーション力が反映されていない。中国でも多くの人々が、こうした点を客観的に捉えていることがこの調査結果からもうかがえる。実際、中国では、フォーチュン500を重視すべきではないとの認識が高まっている。

 第2問に関しては、②を選んだ人が約7割、①を選んだ人がわずか1割だった。この結果は、政府系のマスメディアの見方と異なる。今回の中国企業73社を冷静に見てみると、中国高度成長の陰をうかがわせる。フォーチュン誌「世界500社」にランキングされた中国企業はほとんどグローバルでは知名度が低い国営の銀行、鋼鉄、鉱産、石油、石炭、運輸などのインフラ系に属する。さらに、そのうちの大半が、国家直轄の大型国有企業、いわゆる「中央企業」であり、残りの多くも省や市が所有する地方国有企業である。民間で創業して、成長した民営企業は今年が最も多いとされるが、それでも73社中で5社しかなく、上位200位以内には民営企業は1社も入っていない。そのため、ネットでは、喜ぶべきことではないとの声が強い。