電気自動車(EV)を想定し、国土交通省が規格の策定を進めている「超小型モビリティ」(超小型車)。その成功のヒントは、小型EVの普及が進む中国にどうやらありそうだ。

図1●日産自動車の小型EV「New Mobility Concept(ニューモビリティコンセプト)」(撮影:テクノアソシエーツ)
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 国交省は2012年6月4日に「超小型モビリティ導入に向けたガイドライン」を公表した。同ガイドラインには、少子高齢化やエネルギー需給の逼迫、温暖化ガスの排出量削減といった様々な問題に対する解決策として超小型モビリティが有効だという、同省の考えがつづられている。従来車と同等のサイズや走行性能を持つEVの市販も始まっているが、価格がまだ高く普及のペースは鈍い。少人数、短距離の利用が中心の小型EVなら、車体が軽く搭載する電池の量も減らせるので価格を下げやすい。小型EVの普及が進めば、大都市圏で頻発する渋滞や駐車場不足などの問題も緩和や解決が可能になるだろう。

 EVで市場シェアのトップを狙う日産自動車は、超小型モビリティの事業化でも積極的である。神奈川県や青森県、福岡県で実施された実証走行に「New Mobility Concept」を提供するなど、活発な動きを見せる(図1)。一方、日産と同様にEVの市場で先行する三菱自動車は、現時点では超小型モビリティの製品化に対して慎重な姿勢を崩していない。

「スモール・ハンドレッド」勃興の兆し

 超小型モビリティに期待するのは、国交省や大手自動車メーカーだけではない。ベンチャー企業、各地の中小企業や団体、異業種企業などによる市場参入も活発化しつつある(表1)。東京大学総長室アドバイザーの村沢義久氏は、著書『日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命』で、EVの市場では米国の自動車大手3社「ビッグスリー」に代表される大企業から、無数の中小規模の企業、いわば「スモール・ハンドレッド」に主役が交代すると指摘している。それを裏付けるような動きが日本国内でも出始めているのだ。

表1●国内外の主な小型EVと製造企業(作成:テクノアソシエーツ)
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