一方、優秀な人から辞めていくメーカーに残るのは、必然的に「会社の外では通用しない人」「仕事ができない人」ということになります。この専門家によると、そうした人たちは「いかに自分が会社のことを考えているか」を社内で必死にアピールするのだそうです。そのために使うのが「正論」です。

 いわく「費用対効果の裏付けを示せ」「うまくいく確証はあるのか」「取引先から一筆もらってこい」。これらは、見た目には「会社に損害を与えたくない」という愛社精神から来るものであり、誰も反論できません。しかし、「建設的な意見は一つもない」(同氏)。こうした声にいちいち応えていると、「決定までに2カ月くらい経ってしまう。その間に世の中の状況は全く変わっている」(同氏)。決定自体に意味がなくなってしまうのです。

 この専門家の方は「日本人は一般にボトムアップを好み、心配性の傾向が強い」と言います。「日本のメーカーの人はすぐ『確証は取れたんですか』と言うが、確証があることしかしないのなら、それはもうビジネスではない」(同氏)。