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スティーブ・ジョブズと本田宗一郎---天才亡き後のイノベーション

高田 憲一=日経ものづくり
2012/07/26 09:00
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 遅ればせながらですが、先日、録画していたNHKスペシャル「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ」を見ました。ちょうどホンダのイノベーションに関する書籍の編集作業を進めていたので、スティーブ・ジョブズがイノベーションに関してどんな考えを持っていたか、興味があったからです。そして、とても驚きました。ホンダの創業者である本田宗一郎と共通する部分が幾つもあったからです。

 番組では、1999年に米Time誌のインタビューでの発言「大事なのは技術ではなく、それを使って何を生み出すことができるかだ。私がしたいのは性能の良いコンピュータをつくることではない。コンピュータを使って感動を巻き起こすことなのだ」が紹介されていました。また、米Apple社の共同創業者のスティーブ・ウォズニアックは「ジョブズにとって何よりも大切だったものは人間なんです。それがスティーブ・ジョブズにとって全てなんです」と語っています。

 一方、本田宗一郎は、(ホンダの研究開発を担う)本田技術研究所について、「技術の研究をする所ではない。人間の研究をする所だ」と語っています。研究所の技術者が第1にすべきことは、お客様の心を研究し、お客様に喜んでもらう将来価値を見つけること。それが分かったら、手段である技術を使って、その将来価値を実現すればよい。なので、本田技術研究所は「技術ではなく、人間の研究をする所」というわけです(Tech-On!関連記事)。

 製品の価値を追求する姿勢も共通しています。番組では、「(ジョブズの)最高のものを造りたいという情熱はすさまじかった。しかし時に、いき過ぎることもあった。満足しなければ技術者たちを容赦なく罵倒した」と紹介しています。本田宗一郎も、製品の価値に対して熟慮が足りないとしょっちゅう技術者を怒鳴りつけました。時には「おまえたちはこれが本当にお客様の価値だと思っているのか」と涙を流しながら殴ることもあったそうです。

 共通点はこの他にもありますが、最も基本的なことと感じたのは独創的な製品を開発に取り組む姿勢です。ジョブズは「新しいことを始めるときに一番大切なことは、それを成し遂げたいという『情熱』です。成功と失敗の1番の違いは途中で諦めるかどうか。失敗する人は途中で諦めてしまう」と語ります。一方、本田宗一郎は、それを「想い」と表現しています。ホンダにおける「想い」とは、絶対に諦めにないという意志や信念、取り組む際の熱気やワクワクした気持ち、カオスなどが融合したものです。ジョブズの「情熱」とほとんど同じ意味でしょう。

 ただ、「情熱や想いが重要だ」とか「感動を巻き起こす」とか「技術は大事ではない」などといっても具体的に何をしたらいいのか、なかなか分かりません。ジョブズや宗一郎は天才なので、普通の人がまねることは難しい。では、天才亡き後のイノベーションはどうすればよいのでしょうか。これは大きな問題です。

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