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PCソフト海賊版販売店
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海賊版反対を訴える横断幕はあるものの…

 中国といえばまず印象として、海賊版を思い浮かべる人が多いのではないか。「山寨機(さんじゃいじ)」と呼ばれるノンブランドの製品は、最新チップの供給次第で最新のメーカー製品と“スペック上”は十分に張り合える(ただし、スペックには表れないところで、山寨機のつくりは雑で壊れやすい)。そうした中、ソフトウエア面に差別化の要素を求めるのは自然なところ。ところが、ソフトの場合、海賊版が待ち構えていて「さあどうしたものか」となる。

 非営利団体のBusiness Software Alliance(BSA)によれば、中国のビジネスソフトの違法コピー率は77%(日本は21%)。ところが、BSAの発表数日後に合わせたようにリリースされる中国発の発表(互聯網実験室)によれば、違法コピー率は38%であるという。「なんだ、メンツのために嘘をつくのか」と思うかもしれないが案外そうでもない。

 パソコン(PC)においては、ほぼ全てのPCユーザーがWindowsを利用する。中国は未だに、Windows XPの利用率が世界で一番高く、Windows XPとWindows 7の利用者が多い。Linuxは中国語のディストリビューション(頒布形態)も出ているが、ユーザーはほぼゼロ。「貧しいからLinuxを出せば普及するだろう」ではなく、「貧しかろうと飯の種になるWindowsを利用したい」と中国人(筆者が訪れた他の多くの国もそうだった)は思うわけだ。安価なCPU「atom」や同「Celeron」を搭載したPCを欲しがらない道理(中国人がCeleron搭載パソコンを買わない理由)と同じである。

 そのWindowsに関しては、プリインストールされているメーカー製のPCも増えてはきている。しかし、未だに安さを武器にすべく、Free DOSやLinuxをプリインストールした製品をリリースするメーカーもある。PCを自作する場合も、Windowsなしのメーカー製PCを購入するときと同様に、まずはアップデートパッチに適応済みのカスタマイズされた海賊版Windowsをインストールする。オフィス系ソフトに関しては、プリインストールされたPCは皆無に近く、米Microsoft社の製品の海賊版がインストールされがちだ。海賊版が氾濫するため、日本にも進出する中国Kingsoft社(金山軟件)は個人向けには無料でオフィス系ソフトをリリースする。だが、やはりMicrosoft社製品の海賊版の利用者が多い。

 以前は「さてオフィス系ソフトの次はフォトレタッチ・ソフト(デジタル画像編集ソフト)だ」とばかりに、フォトレタッチ・ソフト「Adobe Photoshop」の海賊版が中国のPCユーザーの間では定番ソフトとなっていた。だが最近では、中国でリリースされたフォトレタッチのフリーソフトが人気である。「撮った写真を気軽に美しく補正できればいい」「自身の写真をよりかわいく格好良くアレンジできればいい」--そういったニーズに合わせたフリーソフトを中国のPCユーザーは支持したのである。こうした状況にあるのは、フォトレタッチ・ソフトだけではない。OSとオフィス系ソフト以外でいえば、頻繁にアップデートせざるを得ないセキュリティー・ソフトは例外としても(有料の正規版を導入)、後は無料の中国産ないしは中文化された海外の人気フリーソフトを導入するのが一般的だ。

 乱暴なことをいえば、正規版の実売価格が10万円を超えようが数千円だろうが、元々全てが海賊版に囲まれた環境では関係なく、「使えるか」「周りが使っているなど評判がいいか」が消費者にとって重要となる。Windowsにしても、海賊版問題を抱えながらも、新しいバージョンが出たら誰もが利用するというわけではなく、未だにWindows XPが支持されているのである。