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回り道の先に未来を見つけた、高橋智隆氏(下)

加藤 幹之=Intellectual Ventures 上級副社長兼日本総代表
2012/08/27 07:00
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 前回から紹介しているロボ・ガレージ 社長でロボットクリエーターの高橋智隆氏は、高校卒業後に社会に出るまで、ほぼ10年間を大学で過ごした(前回のコラム「レールを外れても平気になりました」はこちら)。小さい頃から好きだったメカ作りの道を歩むため、文科系の大学を卒業後に京都大学の工学部に入学し直したのだ。しかも、一般入試を受けてである。

 前回は、この回り道が現在の日本にとって大切な要素を実証しているのではないかという話を書いた。これから日本が歩んでいく高齢化社会と、自分の進むべき道を探す若者たちの悩みの両方を解決する糸口になりそうだと思うからである。

高橋 智隆氏。ロボ・ガレージ社長。
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 そして、高橋氏は回り道の後、「企業」ではなく「起業」を選んだ。彼にとって、必ずしも、起業がすべてだったわけではない。「自分で面白いと思うことを、自分でやってみたい」。そう考えると、自然に起業を選ぶことになったという。

 ロボットの研究開発を手掛けている大企業に入社しても、必ずしもロボット開発に携われるわけではない。それならば、独力でロボット開発に取り組んで、自ら経験を積んだ方がいい。その分野でキャリアを積んだ後の方が、いずれ企業に入ったとしても自分のやりたい仕事ができる可能性が高い。「やれるだけやってみよう」。これが起業に至る考えだったようだ。

 この選択は、多くの注目すべき点を含んでいるように思う。自分で会社を立ち上げてキャリアを積み、企業がその活動を認めて採用するという道筋は、欧米では良くあるケースである。企業側も、特に優れた才能や経験を持った人材を採用する傾向にある。一方、日本の企業、特に大企業はいまだに、社会経験ゼロの大学生を他社に先駆けてなるべく早く採用するというやり方から抜け切れていない。背景にあるのは、「人材は入社してから育てる」という考え方だ。

日本企業でグローバル人材は育つか

 日本企業のスタイルは、別に悪いことではない。だが、今の日本企業に入社して、本当に国際的な人材が育つのだろうか? それぞれの企業の型にはめてしまうだけではないのか? 少し手厳しい意見かもしれないが、これらの疑問はやはり拭うことができない。日本企業も最近では、入社後の若い時期に海外で多くの経験を積ませるなど、開かれた人材育成を試みつつあるようだ。ただ、それだけでは足りない。新卒だけではない柔軟な採用はもちろん、思い切った昇進や人材登用など、欧米では当然と思える施策を大胆に試みることも必要だろう。

 高橋氏のロボ・ガレージは、今でも高橋氏が唯一の役員兼社員である。だから、彼は経営者でもあり、デザイナーでもあり、企画担当でもあり、開発者でもあり、営業担当者でもある。同氏のような飛び抜けた人材が果たして今の日本企業で生けていけるのかという点も検証が必要だ。日本企業の処遇・待遇が国際的に見て硬直化しているとしたら、創造的な人材は自由に能力を発揮できるだろうか。むしろ日本の社会全体として考えると、そうした人材が能力を発揮できる受け皿をどう構築していくかを議論すべきではないか。

 高橋氏のものづくりの考え方で大いに興味を持った点がある。私にとっては「目から鱗(うろこ)」だった。それは、彼が「(作ったロボットの)使い途を事前に見つける必要はない。作ったもので儲ける仕組みも、(ロボットが)普及する中で自然にできていく」と考えていることだ。これは、インターネットのWebサービスの世界では、比較的メジャーな考え方だろう。だが、形のあるものを開発し、それを売るビジネスでは、なかなか考えにくい発想である。

 「人間型ロボットの本質は、それを見た人がロボットを擬人化して、人間として捉えること。そして、ロボットとコミュニケーションしようとする。ロボットと人の対話を起点に無限の可能性が広がるはずです」と高橋氏は語る。

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