2012年6月29日にトヨタ自動車がドイツBMW社と環境技術で中長期的な協力関係を構築することを発表しました。両社は2012年3月に次世代リチウムイオン電池技術に関する共同研究の開始と、2014年から欧州市場向けのトヨタ車にBMW社がディーゼル・エンジン(排気量1.6Lと2.0L)を供給することで合意していました。今回はこれらに加えて、「FC(燃料電池)技術」「スポーツカー」「電動化技術」「軽量化技術」という4分野で協力していくとしています。

 トヨタ自動車の代表取締役社長の豊田章男氏が共同声明の会見で「ハイブリッドやFCといった環境技術は、トヨタが強みとしている分野であり、BMWのお役に立てると信じております」とするように、今後、ハイブリッド車をはじめとした電動車両の技術をBMW社に提供するようです。

 BMW社がトヨタ自動車と提携した背景には、世界各地で進行する自動車に対する環境規制の強化があります。特に米国カリフォルニア州のZEV(zero-emission vehicle)規制が強化され、BMW社も規制対象になることが提携の大きな要因にあるのではないでしょうか。

 現在、カリフォルニア州では年間販売台数が6万台以上の自動車メーカーに対し、排出ガスを出さないEVもしくはFCVなどの販売を義務付けていますが、この規制が2017年発売の2018年モデルから年間販売台数が2万台以上のメーカーも対象となります。具体的には、現状では米General Motors(GM)社と米Ford Motor社、米Chrysler社、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の6社のみが対象でしたが、現状の販売台数で見ると新たにドイツVolkswagen社とドイツDaimler社、ドイツBMW社、韓国Hyundai Motor社、韓国Kia Motors社、マツダの6社が加わることになりそうです。

 しかも、カリフォルニア州ではZEV規制をさらに強化する方針で、2017~2025年に同州で販売される新車の15.4%をEVもしくはPHEV、FCVにするという意欲的な目標を明らかにしています。カリフォルニア州の規制については現在、米国の他の11州も同様な規制を導入しており、多くの自動車メーカーが米国市場の将来を左右する規制と位置付けています。こうした点からドイツ勢や韓国勢も電動車両の投入計画を拡大せざるを得ない状況になりつつあります。

 日経エレクトロニクスでは、2012年8月1日に「専門記者が語る、電動車両と車載電池の最新動向」と題して電動車両の最新動向をはじめ、車載電池の業界マップや技術トレンド、研究開発の方向性について紹介する予定です。EVに欠かせない急速充電器の規格動向についても、米独が推進する「コンボ・コネクタ」規格の最新動向を解説します。ご興味がある方はぜひご参加ください。