日産自動車の「リーフNISMO RC」。パイクスピークに出るという話はない
日産自動車の「リーフNISMO RC」。パイクスピークに出るという話はない
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  「サプライズ出場はないのかなあ」。7100haが焼けるという大規模な山火事のおかげで延期になったレース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」の決勝は8月12日に決まった。未練がましく新しい出場チームのリストを見たが、やはりEV(電気自動車)クラスに日産自動車の名前はない。

 パイクスピークはもともとアマチュアが和気藹々とやっていて、真剣勝負は似合わないレースだ。おふざけの改造車も多い。しかし今年は少し違う。日本から5台のEV(電気自動車)が乗り込んで速さを競う。

 標高はスタート地点が2862m、ゴール地点が4301m。このため空気は薄く、ガソリンエンジン車では低地の約6~7割程度の出力しか出ない。距離が約20kmも短い。EVに競争力のあるレースである。

 だから、パイクスピークは、EVがエンジン車に勝てる可能性のある唯一のレースになる。ここが、“世界最速のEV”を決めるレースになる素質がある。

 市販車のEV技術で他社の一歩先を行っているのは日産である。当然、パイクスピークでも大暴れしてくれると期待してしまう。

 日産は昨年、パイクスピークに普通の「リーフ」を出したが、目立った記録は出さなかった。同社には「リーフNISMO RC」というレース用のEVもあるから、こちらも期待したいが、それは無理。RCは車体全体がCFRP(炭素繊維強化樹脂)製で、パイクスピークの規則に合わない。

 それにRCはリーフと同じ80kWのモータを1台積んでいるだけで、パイクスピークで勝つには“本気度”が足りない。三菱自動車工業の「i-MiEV Evolution」はRCと同じく市販車の部品を使うことを基本的な考え方にしてパイクスピークに出る。それでも市販の「i-MiEV」のモータを47kWから80kWに強化して3台積んでいる。RCには「強化して3台」の部分がない。三菱に対抗するには、日産も比例計算で136kWくらいのモータを3台積まないと追いつかないかもしれない。それはRCとは別物の本格的なマシンになる。残念だが、来年を期待しよう。

 その前に今年のパイクスピークである。山火事の復興支援も兼ねているようだから、盛り上がって欲しい。ツアーもあり、まだ空きがあるようだが、行く場合には高山病に注意していただきたい。人間はどちらかというとエンジンに近いのだから。