「いかにカネを稼ぐか」
 中国の書店に行くとこのタイトルの本が一番多い。中国で成功した起業家や金融関係の人が、チャイニーズドリームを書き綴った成功物語だ。

 日本であれば、小さな街にでもたいがい書店はあるが、中国は全国的に書店の数が少ないように感じる。しかも、国営の新華書店がほぼ独占状態で、その他の書店もこの独占企業の関連会社である場合が多い。

 そして、学習コーナーに行くと一人っ子政策の影響をもろに感じられる。母と子が一緒になって学習参考書を探しているのだ。子供を見ると、嫌々ついてきたという感じ。家庭教師と思われる大学に付き添われて来ている高校生らしき客も多い。中国における受験戦争は猛烈な闘いなのだ。幼稚園のころから数学や国語、英語などの勉強を始め、その受験戦争に備えなければならない。

 毎年1000万人以上の学生達が「高考」と呼ぶ大学入試を受ける。そのうち大学に進学できるのは約600万人、北京にあるエリート校に進めるのは5万人足らずだ。難関と言われる清華大学や北京大学に入れるのはそのうち5000人程度に過ぎない。しかも、大学を卒業したからといって就職できるわけではない。5人に一人が就職できない。大学を卒業して就職できずにいる学生達を「蟻族」と呼ぶ。

 こうした、過酷な争いを勝ち抜くため、多くの若者が外国語を学ぶ。中国でも、一番人気は英語のようだ。受験勉強の一環でもあるが、就職活動のために学ぶ人も多い。高い人気を誇る欧米の外資系企業に入るための勉強なのである。そのあおりを受け、日本に留学する学生や日本語を学ぶ人が減ったかというと、そうでもない。実は、英語に次いで中国で人気があるのは日本語なのである。

 中国で日本語を勉強する人は、日本企業で働くことを目的としている。中国に進出している日系企業は3万社以上で、日本語を使って働く機会を探す学生も近年さらに増えてきているという。日本のアニメや漫画なども日本を学ぶ学生を増やす理由でもあるようだ。日本語の原典で日本のアニメを理解したいということらしい。

 「日本語能力検定」という試験が中国にはあるが、毎年これらを受験する人は20万人にも上る。日本に来る中国人留学生は平成22年統計で14万人強と、過去最高の数字となった。「日本はダメだ。中国にGDPを抜かれた」と悲観する日本人は多いが、案外、日本は中国でまだまだ人気があるのだ。

 日本人気は、意外な所にも現れている。人材市場における日本人人気だ。実際、中国企業が日本企業をターゲットとして、積極的にヘッドハンティングを仕掛けているという。
 「日本企業で教育された労働者は質が高い。評価すべきは身に着けた技術だけではない」「仕事の段取り、仕事への姿勢、礼儀、多くの点において中国企業や他の外国企業にはない能力を備えている」
 日本企業や日本人が高く評価されている点は誇らしいが、従業員が根こそぎ抜かれて
しまうのではとちょっと心配だ。