今回紹介する書籍
題名:六度人脈
編著:李維文
出版社:湖南文芸出版社
出版時期:2012年6月

 今回は『六度人脈』の2回目。

 本コラムは「中国ではこんな本が売れていますよ」というご紹介をする、ということを主たる目的としているが、本書は内容に普遍性が高く、筆者自身が読んでいて実際自分で使えると感じた点も多いので、普段とは少し違い本書の記述をいかに我々の生活に落とし込むかという観点から書物の内容を紹介していきたい。

 まず、「なるほど」と思ったのは「人脈というのはただあるだけでは意味がなく、きちんと整理されていてどのような場合に誰に連絡すればいいか明確になっていなければ意味がない」という表現だ。よく、「人脈」というととにかく知り合いを増やせばいいというようになりがちだが、それでは意味がない。人脈構築の方法を語る前に「なぜ人脈が必要か」についても考察が加えられている。少し長いが本文から引用する。

 基本的な概念を理解したら、次に重要なのは、「六度人脈」を社交に生かすプランだ。プランがなければ、行動は行き当たりばったりになってしまうので、人脈構築においてもプランが重要である。あなたが5年後に何かを成し遂げていたければ、人づきあいの面でも現在から布石を打っていかなければならない。そうしなければ目標の達成はおぼつかない。

 もしあなたに5年後の目標がないのなら、5年後も今のままで、いつも目の前の事態への対応に汲々とし、助けてくれる人も見つからず、みっともない状態のままだ。いま自分の人脈構築の計画を立てれば、数年後には周囲に助けてくれるそれぞれの道の専門家がいるという状態になるだろう。あなたが電話しさえすれば誰かが問題を解決してくれるようになっているのだ。(6~7ページ)

 では、どのようにして人脈構築の計画を練るのか。計画は科学的かつ客観的な合理性がなければならない。それゆえ、我々は人脈構築計画の作成の前に自らの生活と仕事について全面的に調査し、欠点を改善し、自分の強みを洗い出さなければならない。そのために本書ではまず、次の2点を課題としている。

  • (1)自らの事業計画を明確にせよ
  • (2)自らが人脈に対して求めているものを明確にせよ

 これらの問いに対する自らの答えを明確にした上で、人脈はどのようにあるべきかを次のように述べている。

  • (a)人脈は合理的に構築され、混乱していてはならない 
  • (b)人脈は仕事と生活双方の必要性から構築されなければならない
  • (c)人脈は経済面、精神面双方の要求にバランスよく沿ったものでなければならない

 要は、人間関係は仕事に偏っていても、生活に偏っていてもいけないし、また、利益に振り回されるのではなく、精神的にも満たされるものでなければならないということだ。バブル経済と言われる状態の中では人間関係も実利に傾きがち(日本のバブル崩壊時にも「金の切れ目が縁の切れ目」となった事例も少なくない)だが、そうあるべきでない、ということをイントロダクションですでに何度も述べてられている。本書は「6人の隔たり」法則を生かす人脈の作り方、利用し方を述べる本であると同時に、人間関係というものに関しても深い考察が加えられている。それが書籍販売サイトの口コミでも多くの人が書評を書き、その95%が五つ星を付けている理由であろう。