私がコンサルティングを行った中国企業での話である。彼らが「コンサルティング」に期待することは、即実行可能な改善案であって、改善アイデアや方向性などを示しても「不満げな顔つき」である。例えば電動ドライバーを使うほうが格段に速いですよ、と言っても満足せず、具体的に「この電動ドライバーを使いましょう」という答えを期待している。しかし、改善案を具体的に検討し、思考錯誤することによって改善力が徐々に向上するのであって、この力をつけておかないとコンサルタントがいなくなった途端に、改善活動はストップしてしまう。

 改善活動がスタートした当初は、計画立案、改善テーマ設定、改善方向などを説明するが、いざ活動がスタートすると、見事に何もやらない。彼らはもちろん悪気がある訳ではなく、現状のムダに気付かないだけである。さらに改善により生産性を上げたからといって、即給与が上がる訳でもないので、「単にやる気が起きない」だけである。ここで断っておきたいことがある。改善活動といっても、日本のように現場の作業者に期待することはまず無理で、ここでの対象はプロパーの管理職のことを言っている。

 作業者は、読者もご存じの通り、企業のために…と言った気持ちはまずない。離職率も高く、春節後などは、ある工程では半数が新人といったことはざらである。新人が多いと、生産性は確実に低下し、品質も悪くなってしまうことが日常となっている。そういう意味で、作業者に改善を期待することはまず無理である。

 とは言いつつも、改善の必要性を繰り返し話し、改善テーマを一緒になって考え、改善案を皆でとにかく作り上げることを繰り返すことで、本当に徐々にではあるが、誰となく「この作業はここが問題なんだよ」などと意見が出てくるようになる。それでも管理職全員が積極的になることはなく、私の経験では約半数の管理職が前向きに変化してくれる。半数が変わると、積極的ではない管理職も、徐々にではあるが参加の態度を示すようになる。

 改善を進める上でもう一つ重要なことは、プロパーの管理職の中で、ボス的存在の方がおり、その管理職を先頭に立て改善を実践することで、そのボスが少しずつながら他の管理職を説得するようになっていった。この経験は1社だけではない。中国では、自ら飛び込んで、一緒に考え、実践を繰り返すことで、改善のベースはできあがっていく。