ライドシェアのルールは、実際にかかった費用だけを同乗者が均等に割って負担すること。ライドシェアは、あくまで一般人同士の自発的な節約行為なので、旅客「事業」として「利益」を出してはいけない。また、ライドシェア成立の報酬として、サイト運営事業者に仲介料を払う場合と無料の場合がある。無料の場合、サイト運営者の収入はサイトへの広告料だけになる。

企業がCSR目的で推進する例も

 欧州では、移動費用の削減とともに、企業の社会的責任(CSR)をアピールする目的で、ライドシェアを推進している例も多い。例えば従業員の自動車通勤に対し、ライドシェア仲介サイトを使って配車することでクルマの交通量を減らし、会社周辺の渋滞を緩和するといった効果を上げているという。ライドシェアリングは、もともと誰かが持っていた自動車の運行中の空きスペースを共有するため、1人で乗ることが多いカーシェアリング以上に自動車の利用効率を上げ、環境負荷削減に貢献できるともいえる。加えて、カーシェアリングよりコスト削減が大きい場合も多い。

 2012年1月、米ラスベガスで開催された家電の国際展示会「International CES」で、ドイツのダイムラー社が「カートゥゲザー」というライドシェア推進プログラムを公表して話題となった。同社は将来的にSNSなど、ライドシェアに対応した通信アプリケーションを自動車に標準搭載するという。

 日本でも2007年にターンタートル(東京都豊島区)が「のってこ!」というライドシェアリングの仲介サイトを立ち上げた。利用者数は当初伸び悩んだものの、2008年の原油高騰でガソリン価格が上がったのを機に増え始めた。2011年末に会員は2万人を超え、多い月には300~400件のマッチングが成立しているという。東名阪の間での利用が多く、20~30代が利用の中心という。

 このようにカーシェアリング会社の成長の陰で、世界では市民同士で相手を探すライドシェアリングが根づき始めている。国内では「のってこ!」以外にも、駐車場の少ないマンションで住人同士が1台の自動車を共有する仕組みを自発的に作ったり、非営利組織(NPO)が軽自動車のカーシェアリングを運営したりするなど、企業を介在しないシェアリングが次々に登場している。

 先進国では、クルマにかかわる革新(イノベーション)の比重は、走行性能や安全、製造から「利用法」に移ってきた。社会全体で、いかに便利に、そして効率的に利用するか。その1つの解が「共有」であり、そのリーディングカンパニーはますます影響力を高めている。だがその一方で、SNSなどの普及によって企業を介さない共有市場も拡大している。今後、どんな形で新たな利用法が進化していくのか。その中で企業はどんな役割を担えばよいのか。改めて問い直す必要が出てきている。

この記事は日本経済新聞電子版日経BPクリーンテック研究所のコラム「クリーンテック最前線」から転載したものです。