カーシェアリングが事業として先進各国で普及したのは、車両の予約や会員認証、車両のドアロックの開閉などをすべてオンラインで遠隔管理できるようになったからだ。一般的なレンタカーと違い、車両の貸し出しや返却はすべて無人で行われる。短時間の利用も多いカーシェアリングの場合、現場にいちいち社員を配置していては運営コストが膨らんでしまう。

 こうした車両管理システムへの投資は、会員数や車両台数の多寡によらず一定の規模が必要になる。つまり会員数が少ないうちは、システム投資の減価償却費が大きく利益が出にくいが、そこを我慢して一定規模を超えて大きくなれば利益が出てくるという構造である。タイムズ24を傘下に持つパーク24でさえ、カーシェアリング事業の収益性はまだ低く、2012年10月期にようやく部門収支が均衡する見込みだ。

 車両の購入や車両ステーションの確保にかかるコストも、規模が大きいほど有利になるのは自明だろう。例えばオリックス自動車は、本業の自動車リースと合わせることで車両購入台数を増やすことができた。価格交渉力が強まるので1台当たりの購入単価を下げやすい。

写真1●タイムズ24の「タイムズプラス」の提供例
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写真2●オリックス自動車の「オリックスカーシェア」の提供例
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欧州では「乗り合い」が市民権

 だが、こうしたカーシェリングの大手にとって、思わぬ伏兵が登場している。「ライドシェアリング」と呼ばれるシステムだ。自動車に空席がある場合、同じ方面を目指す人を募って同乗しつつ、目的に向かう「相乗り」のことだ。ガソリン代や有料道路の費用を「割り勘」にすれば、移動費用を大幅に節約できる。

 欧州では、かつては駅や若者向けホテルの掲示板などで同乗者を募っていた。しかし2000年ころから、ドイツと英国を中心にインターネットの仲介サイトが立ち上がって、利用者が急増している。ライドシェアリング仲介サイト大手の「カープーリング(carpooling.co.uk)」や「リフトシェア(liftshare.com)」では、それぞれ欧州全体で毎月200万人以上がマッチングに成功し、ライドシェア(相乗り)しているという。

 最近ではSNS(交流サイト)に小規模なライドシェアのコミュニティーができ、マッチングが始まっているが、現状では会員数の多い専用サイトが中心だ。むしろ、専用サイトで相手を探す際に会員がSNSの情報にアクセスしやすいように、一緒に乗る人やドライバーの詳細な情報を事前に得て信頼感を高めるという使い方が広まりつつある。