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ファーウェイ急成長の謎を解く(4)

永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
2012/07/09 00:00
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今回紹介する書籍
題名:解密華為
編著:余勝海
出版社:中信出版社
出版時期:2011年9月

 今回は『解密華為(ファーウェイの秘密を解きあかす)』の4回目。

 ここまでご紹介してきた以外にも本書にはファーウェイの繁栄の秘密がいろいろと解き明かされている。その中で、筆者が特に気になったのは「社員持ち株制度」「管理制度を常に改革すること」であった。社員持ち株制度に関してはファーウェイ側の資金調達が容易になると同時に、社員に会社に対する責任感と忠誠心を持たせるという二つの点でファーウェイの発展に寄与してきた。その一方でファーウェイが上場しないのは社員持ち株制度が複雑なため権利関係に解決しなければならない問題があるからだ、という見方もある。

 また、管理体制も状況に合わせて常に改善を続け、社員の士気を高め、合理的な会社運営を続けてきた。米IBM社に教えを乞い、そのシステムを導入してきたのも、管理体制を国際的な企業にふさわしいものとするためである。

 このように、様々な観点から優れた経営システムを取り入れ発展してきたファーウェイであるが、任正非CEOの強烈なカリスマ性と手腕がファーウェイ発展の大きなポイントであることも否めない。その任正非氏も1944年生まれで70歳を目前にしている。世間の関心がその後継者に集まるのも無理はないだろう。実際本書でも10章のうちの1章を割いて後継者問題について論じている。

 中国は社会主義国ではあるが、家族の結びつきが強く、子供が親の地位を継ぐことも多い。2010年には任正非が自らの子供に跡を継がせるため、腹心である部下の孫亜芳に10億元を渡しファーウェイを去るように言った、という報道が流れた。その後、ファーウェイはこの記事をねつ造だと断じたが、この報道が多くのメディアで取り扱われたことを見ても中国人の心の中には、大企業であっても親が自らの事業を子供に継承させたいと考えるのは当然だ、という感覚があるのだろう。

 しかし、任正非はかつてこのように語っている。

 「ファーウェイが設立したその日から歩んできた道は『賢い者に託す』であって『親しい者に託す』ではない。ファーウェイという会社の運命を一人の人間だけで決めるような状況はあり得ない。」

 また、任正非の以下の言葉からも彼が自分の親族を後継者したいとは考えておらず、ファーウェイを公の存在として尊重したいと考えていることがわかる。

 「もし、株主が団結して私をファーウェイから追い出せるようになったら、それこそがファーウェイが成熟した証拠だと考える。」

 また、「ファーウェイ基本法」においても後継者は以下のような人物だと規定している。

 「ファーウェイの後継者は社内でともに奮闘しているなかで、職員や幹部の中から自然にリーダーとなるような人物であり、『全員後継性』とでもいうような形である。」

 本書ではファーウェイの後継者の可能性として次の4パターンを上げている。

  1. (1)現在の最高幹部集団(EMTと呼ばれている)から一名を選出する。
  2. (2)EMTが全員で後継者となり、順番にトップに座る。
  3. (3)任正非の子息・任平が継ぐ。
  4. (4)外部から経営者を招く。

 ただ、本書中でも(4)に関してはファーウェイ基本法に反するのでありえないと述べている。そうなると(1)~(3)の可能性が残る。それに対し、2011年1月当時、持ち回りのトップであった徐直軍は「第一経済日報」の単独インタビューに対し

 「ファーウェイの未来を任CEOの親族が継ぐことはありえない」

と答えており(1)、(2)の可能性が高いと思われる。

 中国では「カリスマ経営者」の存在は日本より重い。改革開放の開始から30年以上を経たが、その第1期に興った企業は「カリスマ創業者」を中心として成長してきた企業が多い。そして、そのカリスマ経営者たちはその会社の企業文化の象徴である。そのことを考えると今後、ほかの企業でもこのような後継者問題は取りざたされるであろう。ファーウェイで起こることは他の大企業でも起こり得る問題だと考え、今後の事業継承の成り行きを見ておくことが必要である。

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