ご御存知のように、中国は生産国から、経済成長と人口を背景にした市場としての重要性が高まってきた。労働賃金も引き続き上昇基調である。このような変化の中、日系企業の中国法人はその約50%が赤字に陥っていることはあまり知られていない。このことを大きく言えば、ビジネスとして成功していないということであり、中国の商習慣・文化・変化などに対応できていないとも言えるのではないだろうか。

 変化への対応という面では、中国の工場は立ち上げ期を過ぎ、成長期そして成熟に向っている。その中で感じることは、欧米勢などに比べて日系の工場の「現地化」が遅れていることである。工場のスタッフなどをみても、立ち上げ期をとうに過ぎても、管理職は日本人がいまだ比率として多いのである。事務所のフロアをみると一見してわかる。

 過去の欧米進出時に現地法人の発展には「現地化」が大切であることを学んだはずであるが、現地管理職のポジションは日中での人事的なキャリアパスになっていることが多く、過去の学習を活かせていない。これは日本自体が成熟化し、人事ポジションが無くなったこととも関連する。しかし、この状態では、現地プロパーのモチベーションが上がらず、ジョブホッピングも起こる。これでは転職先の欧米企業から、日本企業は優良な企業人学校と皮肉を言われるはずである。逆に中国事業に成功している企業は管理職やトップを現地化している。これはある意味、海外進出の定石であるが、今一度、日本企業も「現地化」について真に考えなおす時が来ていると強く感じる。

 もう一つの変化として、先に述べた労働賃金上昇がある。これに対応するためには、労務費レベルが安いところで生産する、あるいは自動化などで労働生産性を上げるといったことが必要になってくる。その対応の中でも、省人化(自動化)については現在二分されている。日系メーカーで多いタイプは、本国と同じような自動化に走るタイプである。ラインとしてはコピー的であり、ラインの設計・立ち上げは行いやすい。しかし、定常生産となると現地オペレーターには運営が難しいため、稼働率などが上がらず、思った成果を上げていないことが散見される。もちろん品質の維持では有効な場合が多いが、コスト面からは日本製は設備価格が高いため、投資対効果も得にくく後ほど固定費負担で苦しむのである。

 他方、現地メーカーは台湾系や香港系設備メーカーなどを使い、自動化を進めている。当然、こちらの方が投資効果が早く得られる。(業界や工程にもよるが)日本を中心としたマザー工場も良いが、どの競合と戦っているのかを捉えることを忘れてはいけない。また、先の先進国進出は労務費もさほど変わらなかったが、中国は異なる。これらのことも、再認識する必要がある。

 これまで述べたように、これからの中国生産は、「真の現地化」と、労務費などの環境変化を見据え、現地にフィットした生産工程を創造していくことが勝利の条件と考える。